目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
秋風の丘
さまよへる
月の夜の
つきつめて
草結び
わが通ふ
草の実を
父に似し
傷口より
葉の深く
00931
さまよへる母の霊など信ぜねど香たけばややに心鎮まる
サマヨヘル ハハノレイナド シンゼネド コウタケバヤヤニ ココロシズマル
『不文の掟』(四季書房 1960) p.181
【初出】
『形成』 1960.10 香華 (1)
00932
月の夜の墓より犬が曳き帰る或ひは母の見余せし夢
ツキノヨノ ハカヨリイヌガ ヒキカエル アルヒハハハノ ミアマセシユメ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.181
00933
つきつめて母のため何をなし得しや病みゐたる日も逝きにしあとも
ツキツメテ ハハノタメナニヲ ナシエシヤ ヤミヰタルヒモ ユキニシアトモ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.182
00934
草結び児らの作れる罠にさへはまり易くて秋風の丘
クサムスビ コラノツクレル ワナニサヘ ハマリヤスクテ アキカゼノオカ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.182
00935
わが通ふ道の下草刈り呉れよ露しげき夜のまぼろしの母
ワガカヨフ ミチノシタクサ カリクレヨ ツユシゲキヨノ マボロシノハハ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.182
00936
草の実をつけて戻れるわが仔犬隠り沼は夜の何方ならむ
クサノミヲ ツケテモドレル ワガコイヌ コモリヌハヨノ イヅカタナラム
『不文の掟』(四季書房 1960) p.183
00937
父に似し妹と母に似るわれと水そそぎあふ父母の墓に
チチニニシ イモウトトハハニ ニルワレト ミズソソギアフ チチハハノハカニ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.183
00938
傷口より蘇りきといふ言葉秋深みゆく日々に思ほゆ
キズグチヨリ ヨミガエリキト イフコトバ アキフカミユク ヒビニオモホユ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.183
【初出】
『形成』 1960.10 香華 (6)
00939
葉の深くなれる秋海棠父母の墓をめぐりて咲かむ日近し
ハノフカク ナレルベゴニア チチハハノ ハカヲメグリテ サカムヒチカシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.184
【初出】
『形成』 1960.10 香華 (7)