目次
/
全短歌(歌集等)
/
無数の耳
無証の夜
偶然を
噴水の
かじかみて
くびれたる
まどろみの
遠き日の
自在なる
穂先のみ
00940
偶然を装ほふ逢ひの寂しきに樹脂かたまれる赤松も見き
グウゼンヲ ヨソホフアヒノ サビシキニ ジュシカタマレル アカマツモミキ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.8
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (1)
00941
噴水の元栓をとめて人去れば森より早くこころかげりぬ
フンスイノ モトセンヲトメテ ヒトサレバ モリヨリハヤク ココロカゲリヌ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.8
【初出】
『形成』 1961.1 初冬抄 (1)
00942
かじかみて帰りゆく夜の続きつつ坂は薬湯の匂ひしてゐる
カジカミテ カエリユクヨノ ツヅキツツ サカハヤクタウノ ニオヒシテヰル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.9
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (6)
00943
くびれたる箇所より不意にかき暗む内面をもちて壺のふくらみ
クビレタル カショヨリフイニ カキクラム ナイメンヲモチテ ツボノフクラミ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.9
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (7)
00944
まどろみの間無数に生えゐたる触手うつつのわれは持ち得ず
マドロミノ アイダムスウニ ハエヰタル ショクシュウツツノ ワレハモチエズ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.9
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (11)
00945
遠き日の打ち身のあとの疼くごと抜かれし陰画のゆくへも寂し
トオキヒノ ウチミノアトノ ウヅクゴト ヌカレシネガノ ユクヘモサビシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.10
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (28)
00946
自在なるさまに伸びゐて百日紅の古りし木が持つ花咲かぬ枝
ジザイナル サマニノビヰテ サルスベリノ フリシキガモツ ハナサカヌエダ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.10
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (23)
00947
穂先のみ見えゐし花火の音も絶え無証の夜となりて更けゆく
ホサキノミ ミエヰシハナビノ オトモタエ ムショウノヨルト ナリテフケユク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.10
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (3)