西域の壼


00948
内法をややに撓めて聴き来たる言葉あり日を経つつ重たし
ウチノリヲ ヤヤニタワメテ キキキタル コトバアリヒヲ ヘツツオモタシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.11
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (1)


00949
すり替へて思ふならねど枯れつくし襤褸溜めたるごとき蓮田
スリカヘテ オモフナラネド カレツクシ ランルタメタル ゴトキハチスダ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.11
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (2)


00950
鷺草の花に残れる水明りダムサイトはくらき灯を集めゐて
サギソウノ ハナニノコレル ミズアカリ ダムサイトハクラキ ヒヲアツメヰテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.12
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (3)


00951
敗訴となりし経緯も聞きて来て見知らぬ父祖の墓標を仰ぐ
ハイソト ナリシケイイモ キキテキテ ミシラヌフソノ ボヒョウヲアオグ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.12
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (4)


00952
かたまりにくきジエリイを水に冷やしつつ形作られゆく恐怖あり
カタマリニクキ ジエリイヲミズニ ヒヤシツツ カタチツクラレ ユクキョウフアリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.12
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (10)


00953
呼び捨てにわが名言ひゐつと聞きしのみ帰り来て刻むパセリが青し
ヨビステニ ワガナイヒヰツト キキシノミ カエリキテキザム パセリガアオシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.13
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (18)


00954
マヨネーズ搾り出しゐて寂しきに展性のごときをみづからは持つ
マヨネーズ シボリダシヰテ サビシキニ テンセイノゴトキヲ ミヅカラハモツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.13
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (17)


00955
如何ならむ薬種か入れしわが夜々の語彙溜めて古代西域の壺
イカナラム ヤクシュカイレシ ワガヨヨノ ゴイタメテコダイ セイイキノツボ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.13
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (9)