目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
遠き山河
一夏に
気折れせる
遺されし
措葉いろに
現像も
つなぎ得ぬ
野の起伏
木耳を
00956
一夏に荒らせる庭とめぐりつつ野芥子の穂わた吹けば飛びかふ
ヒトナツニ アラセルニワト メグリツツ ノゲシノホワタ フケバトビカフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.14
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (13)
00957
気折れせる夜々に思へば念力のごときを持ちて生終へし母
キオレセル ヨヨニオモヘバ ネンリキノ ゴトキヲモチテ シヤウオヘシハハ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.14
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (14)
00958
遺されし香嚢の香のうすれゆき如何に漂ふ未来と思ふ
ノコサレシ コウノウノカノ ウスレユキ イカニタダヨフ ミライトオモフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.15
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (15)
00959
措葉いろに森は暮れつつ沼尻に水のこだまの光るをりふし
オシバイロニ モリハクレツツ ヌマジリニ ミズノコダマノ ヒカルヲリフシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.15
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (5)
00960
現像もせぬままに古りしフイルム出づいくばくわれの過去を封じて
ゲンゾウモ セヌママニフリシ フイルムイヅ イクバクワレノ カコヲフウジテ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.15
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (9)
00961
つなぎ得ぬ断片として持つ記憶夢にしてあらぬ順につながる
ツナギエヌ ダンペントシテ モツキオク ユメニシテアラヌ ジュンニツナガル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.16
【初出】
『形成』 1961.1 初冬抄 (4)
00962
野の起伏川の名などもはろけきに燦爛と過ぎし一夏ありき
ノノキフク カワノナナドモ ハロケキニ サンラントスギシ ヒトナツアリキ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.16
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (24)
00963
木耳を剝ぎゆく魔物見し日より日毎に烈し林の落ち葉
キクラゲヲ ハギユクマモノ ミシヒヨリ ヒゴトニハゲシ ハヤシノオチバ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.16
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (12)