目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
光る石
蛇の卵
伴はれ
拓本を
冷却器の
ポケットに
風折れの
川底の
蝕甚の
00994
蛇の卵探すと森の少年ら風折れの木を跳びてすばやし
ヘビノタマゴ サガストモリノ ショウネンラ カザヲレノキヲ トビテスバヤシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.29
00995
伴はれ旅行かむ日を思ひ来て楓の花の降る道に出づ
トモナハレ タビユカムヒヲ オモヒキテ カエデノハナノ フルミチニイヅ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.29
00996
拓本を習ふ少女ら嬉々とゐて隠れ切支丹の跡持てる古碑
タクホンヲ ナラフオトメラ キキトヰテ カクレキリシタンノ アトモテルコヒ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.30
【初出】
『形成』 1961.9 田園抄 (3)
00997
冷却器の音する茶房に落ちあひてヒールの泥もいつしか乾く
フリーザーノ オトスルサボウニ オチアヒテ ヒールノドロモ イツシカカワク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.30
【初出】 『新日記白樺』 1963.1 三叉路 (8)
00998
ポケットにねぢこまれしはわがどの部分人を帰してより慰まず
ポケットニ ネヂコマレシハ ワガドノブブン ヒトヲカエシテ ヨリナグサマズ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.30
【初出】
『形成』 1961.3 冬夜抄 (5)
00999
風折れの木の折れ口に抗ひの痕をとどめてするどし幹は
カザオレノ キノオレグチニ アラガヒノ キズヲトドメテ スルドシミキハ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.31
01000
川底の石は光ると渡り来て息荒く貨車の過ぎゆくに会ふ
カワゾコノ イシハヒカルト ワタリキテ イキアラクカシャノ スギユクニアフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.31
01001
蝕甚のまま昇り来む月待てばわがなす故意のなべて危ふし
ショクジンノ ママノボリコム ツキマテバ ワガナスコイノ ナベテアヤフシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.31
【初出】
『短歌』 1960.12 西域の壺 (21)