目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
芯の重み
重心が
きりのなき
森を抜けて
花栗の
妹に
夜の駅の
生け垣を
とめどなく
01092
重心が迫り上げられて苦しきに間をおかず来る製材の音
ジュウシンガ セリアゲラレテ クルシキニ マヲオカズクル セイザイノオト
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.66
【初出】
『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (15)
01093
きりのなき仕事区切りて中心がくぼむ朱肉も机にしまふ
キリノナキ シゴトクギリテ チュウシンガ クボムシュニクモ ツクエニシマフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.66
【初出】
『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (16)
01094
森を抜けてのがるるごとく帰りしが眼裏に白き一枚の沼
モリヲヌケテ ノガルルゴトク カエリシガ マナウラニシロキ イチマイノヌマ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.67
【初出】
『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (17)
01095
花栗の香の吹き溜まるゆふまぐれ埴輪の巫女のくちびる動く
ハナグリノ カノフキタマル ユフマグレ ハニワノミコノ クチビルウゴク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.67
【初出】
『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (18)
01096
妹に弾かせむワルツ選びをりわかち得る幸なほある如く
イモウトニ ヒカセムワルツ エラビヲリ ワカチウルサチ ナホアルゴトク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.67
01097
夜の駅の伝言板に溢れゐる文字声なして響むことあり
ヨノエキノ デンゴンバンニ アフレヰル モジコエナシテ トヨムコトアリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.68
【初出】
『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (19)
01098
生け垣を透かして歩むわれの影引き裂かれたき心が還る
イケガキヲ スカシテアユム ワレノカゲ ヒキサカレタキ ココロガカエル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.68
【初出】
『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (29)
01099
とめどなく降る売子木の花見つつゐて芯の重みに堪へ得よわれは
トメドナク フルエゴノハナ ミツツヰテ シンノオモミニ タヘエヨワレハ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.68
【初出】
『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (30)