冬のエチユード


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腕時計読みあひて椅子を立ちゆけりいかなる夜の別離かあらむ
ウデドケイ ヨミアヒテイスヲ タチユケリ イカナルヨルノ ベツリカアラム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.78
【初出】 『形成』 1965.10 「無題」 (6)


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マニキユアのもう一色を買ひて来てはなびらいろによみがへる指
マニキユアノ モウヒトイロヲ カヒテキテ ハナビライロニ ヨミガヘルユビ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.78


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妹の弾くエチユードの歌ながれ逢はむよすがをわれは思へり
イモウトノ ヒクエチユードノ ウタナガレ アハムヨスガヲ ワレハオモヘリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.79


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緋の房を垂るるピアノの椅子ゆれてポロネーズ弾く寂しき夫人
ヒノフサヲ タルルピアノノ イスユレテ ポロネーズヒク サビシキフジン

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.79


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パリの地図封じて遠く来し手紙誤差のやうな距離とも思ふ
パリノチズ フウジテトオク コシテガミ ゴサノヤウナ キョリトモオモフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.79
【初出】 『形成』 1963.3 パリの地図 (7)