目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
春を呼ぶ
呪縛解くる
手に乗れる
ヒヤシンスの
石膏の
エンジンの
何を買ふ
見切りの品
白鳥の
01130
呪縛解くるやうに朱の色褪せてゆく漂白瓶の中のアマリリス
ジュバクトクル ヤウニシュノイロ アセテユク ヒョウハクビンノ ナカノアマリリス
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.80
【初出】
『形成』 1962.4 街上抄 (1)
01131
手に乗れる文鳥は脚あたたかくマカロニの皿ついばみやまず
テニノレル ブンチョウハアシ アタタカク マカロニノサラ ツイバミヤマズ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.80
【初出】
『形成』 1963.6 残冬抄 (4)
01132
ヒヤシンスの株殖えて咲くやさしさも予後の歩みを遠くいざなふ
ヒヤシンスノ カブフエテサク ヤサシサモ ヨゴノアユミヲ トオクイザナフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.81
【初出】
『形成』 1962.7 移る日々 (2)
01133
石膏の小さきヴイナスを贈りしが踏み砕かれて遠き過去あり
セッコウノ チサキヴイナスヲ オクリシガ フミクダカレテ トオキカコアリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.81
【初出】
『形成』 1962.7 移る日々 (3)
01134
エンジンの音せぬ車騒がしき車さまざまにわれを過ぎゆく
エンジンノ オトセヌクルマ サワガシキ クルマサマザマニ ワレヲスギユク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.81
【初出】
『形成』 1962.7 移る日々 (4)
01135
何を買ふ列とも知れず彎曲し尾は駅前の人波に消ゆ
ナニヲカフ レツトモシレズ ワンキョクシ オハエキマエノ ヒトナミニキユ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.82
【初出】
『形成』 1962.4 街上抄 (5)
01136
見切りの品告ぐる散らしを渡されつ無欲よそほひ歩める時に
ミキリノシナ ツグルチラシヲ ワタサレツ ムヨクヨソホヒ アユメルトキニ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.82
【初出】
『形成』 1962.4 街上抄 (6)
01137
白鳥の北へ飛び立つ羽音など聞かせて春を呼ぶ夜のラヂオ
ハクチョウノ キタヘトビタツ ハオトナド キカセテハルヲ ヨブヨノラヂオ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.82
【初出】
『形成』 1962.5 春を呼ぶ (8)