目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
光るボタン
道標の
地下街を
土管掘る
をりをりに
針箱に
祖母の死へ
水呑みに
セロハンが
01179
道標の石濡らしゆく雨の中きほふ菖蒲の白のはげしさ
ドウヒョウノ イシヌラシユク アメノナカ キホフアヤメノ シロノハゲシサ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.99
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (1)
01180
地下街を通ひ慣れつつわが髪の仮髪のやうに重たき日あり
チカガイヲ カヨヒナレツツ ワガカミノ カヅラノヤウニ オモタキヒアリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.99
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (2)
01181
土管掘る人ら憩へり凹凸のしるき薬罐を焚き火に掛けて
ドカンホル ヒトライコヘリ オウトツノ シルキヤカンヲ タキビニカケテ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.100
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (4)
01182
をりをりにサワーグラスを磨きつつ欠け来しセット足すこともなし
ヲリヲリニ サワーグラスヲ ミガキツツ カケコシセット タスコトモナシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.100
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (5)
01183
針箱に溜まりしボタン亡き父の制服の光るボタンも混る
ハリバコニ タマリシボタン ナキチチノ セイフクノヒカル ボタンモマジル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.100
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (6)
01184
祖母の死へ伴はれゆきし思ひ出に坂あり母に手を曳かれゐき
ソボノシヘ トモナハレユキシ オモヒデニ サカアリハハニ テヲヒカレヰキ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.101
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (8)
01185
水呑みに戻れる犬も間なく去りこころ鎮めて字劃を数ふ
ミズノミニ モドレルイヌモ マナクサリ ココロシズメテ ジカクヲカゾフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.101
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (9)
01186
セロハンが先づ燃え表紙の焦げてゆく幻覚を夜のをりふしに持つ
セロハンガ マヅモエヒョウシノ コゲテユク ゲンカクヲヨノ ヲリフシニモツ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.101
【初出】
『形成』 1963.7 雨衣 (17)