目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
風のやむとき
竹伐りが
枯れ枝を
吸ひ殻を
草むらに
最後の
執拗に
蔓薔薇の
裏返しの
尖端に
一本の
雨あとの
01222
竹伐りが去りゆきしあとの藪乱れ沼にさしゐるながき夕映え
タケキリガ サリユキシアトノ ヤブミダレ ヌマニサシヰル ナガキユウバエ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.115
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (1)
01223
枯れ枝を踏みたる音にたじろげば林はいつか風やみてゐる
カレエダヲ フミタルオトニ タジロゲバ ハヤシハイツカ カゼヤミテヰル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.115
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (2)
01224
吸ひ殻を沼に投げ捨て立ちゆけり何決意せし人にかあらむ
スヒガラヲ ヌマニナゲステ タチユケリ ナニケツイセシ ヒトニカアラム
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.116
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (3)
01225
草むらに柵崩え残りまぼろしの胴輝ける馬歩み来る
クサムラニ サククエノコリ マボロシノ ドウカガヤケル ウマアユミクル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.116
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (4)
01226
最後のマッチを擦りて確かめしおもかげなりき去りてはろけし
サイゴノ マッチヲスリテ タシカメシ オモカゲナリキ サリテハロケシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.116
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (5)
01227
執拗に突堤の灯を砕きゐし波に次第に溶けつつ眠る
シツヨウニ トッテイノヒヲ クダキヰシ ナミニシダイニ トケツツネムル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.117
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (6)
01228
蔓薔薇の咲きては褪せてゆく日々に太き土管は掘りあげられつ
ツルバラノ サキテハアセテ ユクヒビニ フトキドカンハ ホリアゲラレツ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.117
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (7)
01229
裏返しのわれを見たしと言ひしとふ仕事の虫とも言ひゐしといふ
ウラガエシノ ワレヲミタシト イヒシトフ シゴトノムシトモ イヒヰシトイフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.117
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (8)
01230
尖端に吊るされてゐし記憶にて耳を離れぬ点滴の音
センタンニ ツルサレテヰシ キオクニテ ミミヲハナレヌ テンテキノオト
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.118
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (12)
01231
一本のアツシユの杖を遺す部屋背教は今もわが身に疼く
イッポンノ アツシユノツエヲ ノコスヘヤ ハイキョウハイマモ ワガミニウヅク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.118
【初出】
『律』 1962.6 訴人の貌 (5)
01232
雨あとの靄流れつつ地の上は切り株殖えてゆくばかりなり
アメアトノ モヤナガレツツ チノウエハ キリカブフエテ ユクバカリナリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.118
【初出】
『短歌』 1963.7 雨季のうた (20)