冬夜


01238
事故の夜のざはめきの中カンテラに鬼面のごとき顔照らしあふ
ジコノヨノ ザハメキノナカ カンテラニ キメンノゴトキ カオテラシアフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.121
【初出】 『形成』 1963.12 落葉季 (4)


01239
人を轢きしトロもレールも蔽ふまで一夜落ち葉の降りつもりたり
ヒトヲヒキシ トロモレールモ オオフマデ ヒトヨオチバノ フリツモリタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.121
【初出】 『形成』 1963.12 落葉季 (5)


01240
安らぎに遠きこころぞ夜の卓に固形スープを砕きつつゐて
ヤスラギニ トオキココロゾ ヨノタクニ コケイスープヲ クダキツツヰテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.122
【初出】 『形成』 1963.12 落葉季 (6)


01241
くるみ釦次々に縫ひ縮めつつ解けぬ符牒のあるごとき日よ
クルミボタン ツギツギニヌヒ チヂメツツ トケヌフチョウノ アルゴトキヒヨ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.122
【初出】 『形成』 1963.10 日常抄 (6)


01242
石室の底に落ち葉を敷き詰めて死よりも深き眠りがほしき
イシムロノ ソコニオチバヲ シキツメテ シヨリモフカキ ネムリガホシキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.122
【初出】 『形成』 1963.12 落葉季 (1)