季冬日々


01243
わらわらとほどけゐし何の荒縄か醒めてガラスに雨光りゐる
ワラワラト ホドケヰシナンノ アラナワカ サメテガラスニ アメヒカリヰル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.124
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (1)


01244
牛を呼ぶ野太き声を聞きしのみ霧にしめれる枯れ原を越ゆ
ウシヲヨブ ノブトキコエヲ キキシノミ キリニシメレル カレハラヲコユ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.124
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (2)


01245
少しづつずれてかさなりゐる落ち葉逢はむ願ひに遠く歩めば
スコシヅツ ズレテカサナリ ヰルオチバ アハムネガヒニ トオクアユメバ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.125
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (3)


01246
森深く陽ざしはららぐ窪地あり昼なか通る日も稀にして
モリフカク ヒザシハララグ クボチアリ ヒルナカトオル ヒモマレニシテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.125
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (4)


01247
ささ波のごとき冬雲引き寄せて光る沼あり葦原の果て
ササナミノ ゴトキフユクモ ヒキヨセテ ヒカルヌマアリ アシハラノハテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.125
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (5)


01248
木枯らしに醒めて思へり風の夜は星が美しと言ひて歩みき
コガラシニ サメテオモヘリ カゼノヨハ ホシガウツクシト イヒテアユミキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.126
【初出】 『形成』 1964.5 「無題」 (6)


01249
いささかの仕事を夜に持ちこして逢はずにすむと思ふさみしさ
イササカノ シゴトヲヨルニ モチコシテ アハズニスムト オモフサミシサ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.126
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (7)


01250
香料列島めぐる旅にも慰まず海のあをさを人の告げ来る
コウリョウレットウ メグルタビニモ ナグサマズ ウミノアヲサヲ ヒトノツゲクル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.126
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (6)