橋灯の下


01251
目薬を鞄に持ちて通ふ日々火の粉のごとき雪が降り来る
メグスリヲ カバンニモチテ カヨフヒビ ヒノコノゴトキ ユキガフリクル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.127
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (12)


01252
補聴器をあてて潮騒聞くと言ふ訪はざりし間に老い深めゐて
ホチョウキヲ アテテシオサイ キクトイフ トハザリシマニ オイフカメヰテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.127
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (13)


01253
鉱山の町に勤めし遠き日がよみがへり雪のガードを渡る
コウザンノ マチニツトメシ トオキヒガ ヨミガヘリユキノ ガードヲワタル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.128
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (22)


01254
橋灯の下過ぐるとき時計読み遅き帰りを夜々に歎かふ
キョウトウノ シタスグルトキ トケイヨミ オソキカエリヲ ヨヨニナゲカフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.128
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (8)


01255
ライターをともして表札を仰ぎゐし人あり影のごとく去りたり
ライターヲ トモシテヒョウサツヲ アオギヰシ ヒトアリカゲノ ゴトクサリタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.128
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (9)


01256
鬼火見てくらすならむと言はれしが墓原は夜々笹の葉の風
オニビミテ クラスナラムト イハレシガ ハカハラハヨヨ ササノハノカゼ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.129
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (14)


01257
絵の中の運河に映る月を消し橋を消しつつ眠るほかなき
エノナカノ ウンガニウツル ツキヲケシ ハシヲケシツツ ネムルホカナキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.129
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (15)


01258
両肩をシヨールにくるみ眠る夜々帰りて住まむふるさともなし
リョウカタヲ シヨールニクルミ ネムルヨヨ カエリテスマム フルサトモナシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.129
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (16)