何処へ


01267
くれぐれの野を追はれゆく黄牛の未だをさなき角持ちゐたり
クレグレノ ノヲオハレユク アメウシノ イマダヲサナキ ツノモチヰタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.133
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (23)


01268
鷺一羽蠟の白さに立てる見つ光とぼしき河原をゆきて
サギイチワ ロウノシロサニ タテルミツ ヒカリトボシキ カワラヲユキテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.133
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (24)


01269
宵々に灯をちりばめむわが窓を起点にのばす枯れ原の道
ヨヒヨヒニ ヒヲチリバメム ワガマドヲ キテンニノバス カレハラノミチ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.134
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (25)


01270
まなうらに白々と立つ噴水も病む目のゆゑとして眠るなり
マナウラニ シロジロトタツ フンスイモ ヤムメノユヱト シテネムルナリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.134
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (26)


01271
落ち柚子の腐つ香土に漂へば夜の更けてまた雨降り出でむ
オチユズノ クダツコウドニ タダヨヘバ ヨノフケテマタ アメフリイデム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.134
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (27)


01272
手袋をレースに替へて出づる朝一夜に闌けし椿を踏みて
テブクロヲ レースニカヘテ イヅルアサ ヒトヨニタケシ ツバキヲフミテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.135
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (28)


01273
鮮血を噴くあたらしき傷を欲りさすらひゆけば路地深き街
センケツヲ フクアタラシキ キズヲホリ サスラヒユケバ ロジフカキマチ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.135
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (29)


01274
伐木のあとあらはなる夕焼けの空ありわれは何処へ発たむ
バツボクノ アトアラハナル ユウヤケノ ソラアリワレハ イヅクヘタタム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.135
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (30)