訣別


01337
換算し得る年月と思はねど償ひ呉れむと言ふ人ならず
カンザンシ ウルトシツキト オモハネド ツグナヒクレムト イフヒトナラズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.159
【初出】 『形成』 1964.8 「無題」 (1)


01338
待ちて得しもの幾ばくぞ十年目白髪のめだつ君を見しのみ
マチテエシ モノイクバクゾ ジュウネンメ シラガノメダツ キミヲミシノミ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.159
【初出】 『形成』 1964.8 「無題」 (2)


01339
色褪せし花忽ちに散りし花さまざまにわれのこころを乱す
イロアセシ ハナタチマチニ チリシハナ サマザマニワレノ ココロヲミダス

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.160
【初出】 『形成』 1964.6 「無題」 (2)


01340
転換を計り呉れむとする汝か緑いろ濃き地図をひろげて
テンカンヲ ハカリクレムト スルナレカ ミドリイロコキ チズヲヒロゲテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.160
【初出】 『形成』 1964.8 「無題」 (4)


01341
切れ味を試しつつ刃物売れる見つ人参の屑土に散りゐつ
キレアジヲ タメシツツハモノ ウレルミツ ニンジンノクズ ツチニチリヰツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.160


01342
涙もろくなりゐるわれかバスを待つ広場の人のいきれの中に
ナミダモロク ナリヰルワレカ バスヲマツ ヒロバノヒトノ イキレノナカニ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.161
【初出】 『形成』 1964.8 「無題」 (3)


01343
書類の重石に置ける灰皿にうすき埃の見えて夕づく
ショルイノ オモシニオケル ハイザラニ ウスキホコリノ ミエテユウヅク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.161
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (18)


01344
森に来て誰か吹き習ふトランペツト笑ひあふまで心直りつ
モリニキテ タレカフキナラフ トランペツト ワラヒアフマデ ココロナオリツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.161
【初出】 『形成』 1964.8 「無題」 (6)