目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
潮の音
屋上の
シヤンデリアの
高まりて
草はらの
そそのかす
蝙蝠の
なめらかに
坂道の
石膏の
繃帯に
潮鳴りの
01353
屋上の噴泉を見て降り来しに松葉杖など人は買ひゐる
オクジョウノ フンセンヲミテ オリコシニ マツバヅエナド ヒトハカヒヰル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.165
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (2)
01354
シヤンデリアのあかりの一つつかぬまま紙の吹雪のふりまかれたり
シヤンデリアノ アカリノヒトツ ツカヌママ カミノフブキノ フリマカレタリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.165
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (5)
01355
高まりて来る夜のうしほ蛾のひらくごとくに白き扇が動く
タカマリテ クルヨノウシホ ガノヒラク ゴトクニシロキ オウギガウゴク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.166
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (6)
01356
草はらの露に濡れたる足のまま溺れてゐたし花火の夜に
クサハラノ ツユニヌレタル アシノママ オボレテヰタシ ハナビノヨルニ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.166
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (7)
01357
そそのかすごとき手なりきすきとほる黒の手袋脱ぐこともなく
ソソノカス ゴトキテナリキ スキトホル クロノテブクロ ヌグコトモナク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.166
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (8)
01358
蝙蝠の傾ぎつつ舞ふ夢なりき傷つけばなほ飛ぶほかはなく
コウモリノ カシギツツマフ ユメナリキ キズツケバナホ トブホカハナク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.167
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (12)
01359
なめらかに這ふ夜の野火と見てゐしが遠景に人の影すれちがふ
ナメラカニ ハフヨノノビト ミテヰシガ エンケイニヒトノ カゲスレチガフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.167
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (13)
01360
坂道の白々と続きゐし記憶暗かりし海の色も忘れず
サカミチノ シロジロトツヅキ ヰシキオク クラカリシウミノ イロモワスレズ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.167
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (14)
01361
石膏の鼻梁思ひ切りもりあげて誰にも似ざる像かきざまむ
セッコウノ ビリョウオモヒキリ モリアゲテ タレニモニザル ゾウカキザマム
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.168
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (17)
01362
繃帯ににじむマシン油まことわれは悔い改むること少なきか
ホウタイニ ニジムマシンユ マコトワレハ クイアラタムル コトスクナキカ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.168
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (18)
01363
潮鳴りの音を鎮めて眠らむに底知れぬ窪みなどが見え来る
シオナリノ オトヲシズメテ ネムラムニ ソコシレヌクボミ ナドガミエクル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.168
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (19)