真葛原


01372
煙もて空に占ふ何あらむ落ち葉を焚けば風が集まる
ケムリモテ ソラニウラナフ ナニアラム オチバヲタケバ カゼガアツマル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.172
【初出】 『短歌』 1964.9 真葛原 (1)


01373
新しき白布机に掛けたれば生き残りゐるかなしみ深し
アタラシキ ハクフツクエニ カケタレバ イキノコリヰル カナシミフカシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.172
【初出】 『短歌』 1964.9 真葛原 (4)


01374
真葛の葉しげれる沢をつたひゆきたづぬる死者はみな顔の無き
マクズノハ シゲレルサワヲ ツタヒユキ タヅヌルシシャハ ミナカオノナキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.173
【初出】 『短歌』 1964.9 真葛原 (3)


01375
闇を来て触るる道草ただよへる魚のごとくに歩みてゐしや
ヤミヲキテ フルルミチクサ タダヨヘル ウオノゴトクニ アユミテヰシヤ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.173
【初出】 『短歌』 1964.9 真葛原 (2)


01376
遊牧の男の一人わが夜々の夢に入り来て汗を匂はす
ユウボクノ オトコノヒトリ ワガヨヨノ ユメニイリキテ アセヲニオハス

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.173
【初出】 『短歌』 1964.9 真葛原 (5)