目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
沙羅の垣
道ばたに
川水の
粗壁の
スプーンの
崖下の
隙のなき
ぬかりなく
喪の家を
01377
道ばたに模造の真珠売られゐるまづしき街も過ぎて旅行く
ミチバタニ モゾウノシンジュ ウラレヰル マヅシキマチモ スギテタビユク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.174
【初出】
『形成』 1964.10 「無題」 (1)
01378
川水の錆びてたゆたふ橋の下流しやりたき思ひわが持つ
カワミズノ サビテタユタフ ハシノシタ ナガシヤリタキ オモヒワガモツ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.174
【初出】
『形成』 1965.6 「無題」 (1)
01379
粗壁のまま入りて住む一家族女童のこゑを夜々にひびかす
アラカベノ ママイリテスム イチカゾク メワラハノコヱヲ ヨヨニヒビカス
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.175
【初出】
『形成』 1964.11 「無題」 (1)
01380
スプーンの箱くつがへしたる残響のきらきらとして一夜続きぬ
スプーンノ ハコクツガヘシタル ザンキョウノ キラキラトシテ ヒトヨツヅキヌ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.175
【初出】
『形成』 1964.11 「無題」 (3)
01381
崖下の家のあたりにとまりたる車と思ひ夜半を醒めゐる
ガケシタノ イエノアタリニ トマリタル クルマトオモヒ ヨワヲサメヰル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.175
【初出】
『形成』 1965.6 「無題」 (4)
01382
隙のなき論も寂しと聴きゐたり膝に置きたる両手が懈し
スキノナキ ロンモサビシト キキヰタリ ヒザニオキタル リョウテガタユシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.176
【初出】
『形成』 1964.12 「無題」 (3)
01383
ぬかりなく勤めつづけて何あらむ雲を見る癖もいつか失ふ
ヌカリナク ツトメツヅケテ ナニアラム クモヲミルクセモ イツカウシナフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.176
01384
喪の家を指す矢印にみちびかれ沙羅散りしける垣に添ひゆく
モノイエヲ サスヤジルシニ ミチビカレ サラチリシケル カキニソヒユク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.176
【初出】
『形成』 1964.12 「無題」 (1)