目次
/
全短歌(歌集等)
/
無数の耳
萩咲く家
住みつきし
結びめを
母の櫛
山椒の
遠くにて
口紅を
子規の忌も
鉄分の
01385
住みつきしころより残る切り株と仔犬をつなぐをりふしに恋ふ
スミツキシ コロヨリノコル キリカブト コイヌヲツナグ ヲリフシニコフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.177
01386
結びめをほどくごとくに花こぼす木蓮も夜のまなかひに置く
ムスビメヲ ホドクゴトクニ ハナコボス モクレンモヨノ マナカヒニオク
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.177
【初出】
『彩』 1965.6 潮鳴り (9)
01387
母の櫛父の時計も土にいけて去りゆくこころ定めむとする
ハハノクシ チチノトケイモ ツチニイケテ サリユクココロ サダメムトスル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.178
【初出】
『形成』 1964.9 「無題」 (1)
01388
山椒のつぶらに赤く実る庭移り来し家に幸待つごとし
サンショウノ ツブラニアカク ミノルニワ ウツリコシイエニ サチマツゴトシ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.178
【初出】
『形成』 1964.9 「無題」 (2)
01389
遠くにてガラス割れたる音せしがわれもいらだつ心を持てリ
トオクニテ ガラスワレタル オトセシガ ワレモイラダツ ココロヲモテリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.178
【初出】
『形成』 1964.10 「無題」 (4)
01390
口紅をさして貰へば帰りゆくまだ目のあかぬ仔犬抱き来て
クチベニヲ サシテモラヘバ カエリユク マダメノアカヌ コイヌイダキキテ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.179
【初出】
『形成』 1964.10 「無題」 (5)
01391
子規の忌も過ぎしと思ふ朝々に尾長の羽の落ちて吹かるる
シキノキモ スギシトオモフ アサアサニ オナガノハネノ オチテフカルル
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.179
01392
鉄分のぬけぬ井戸水瀘して汲み住み慣れゆかむ萩咲く家に
テツブンノ ヌケヌイドミズ コシテクミ スミナレユカム ハギサクイエニ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.179
【初出】
『形成』 1964.10 「無題」 (6)