雪の日


01414
水晶の古りし印鑑来む年はよろこびごとに捺す日もあれよ
スイショウノ フリシインカン コムトシハ ヨロコビゴトニ オスヒモアレヨ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.189
【初出】 『形成』 1965.3 「無題」 (1)


01415
ガソリンを地下の倉庫に充たしたる給油所成りて日々に賑はふ
ガソリンヲ チカノソウコニ ミタシタル キュウユウジョナリテ ヒビニニギハフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.189
【初出】 『形成』 1965.3 「無題」 (6)


01416
亡き母のコート別れし夫の袷さまざまの端布葛籠より出づ
ナキハハノ コートワカレシ ツマノアワセ サマザマノハギレ ツヅラヨリイヅ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.190
【初出】 『形成』 1965.3 「無題」 (2)


01417
ガラス戸に湯気こもらせて雪の日の煮炊きたのしむ姉と妹
ガラスドニ ユゲコモラセテ ユキノヒノ ニタキタノシム アネトイモウト

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.190
【初出】 『形成』 1965.3 「無題」 (7)


01418
蹄鉄のあとを求めてさすらへり何に憑かれゐし夢にかあらむ
テイテツノ アトヲモトメテ サスラヘリ ナンニツカレヰシ ユメニカアラム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.190
【初出】 『形成』 1965.3 「無題」 (3)


01419
夜の森を飛び立ちてゆく鳥の声もの縫ふわれは針を磨けり
ヨノモリヲ トビタチテユク トリノコエ モノヌフワレハ ハリヲミガケリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.191
【初出】 『形成』 1965.1 「無題」 (1)


01420
飾り窓に残れる銀の十字架を見届けて夜の慰め淡し
カザリマドニ ノコレルギンノ ジュウジカヲ ミトドケテヨノ ナグサメアワシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.191
【初出】 『形成』 1965.1 「無題」 (3)


01421
立ち向ふ心いつしか湧きて歩む何が端緒といふにもあらず
タチムカフ ココロイツシカ ワキテアユム ナニガタンショト イフニモアラズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.191
【初出】 『形成』 1965.1 「無題」 (4)