目次
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全短歌(歌集等)
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無数の耳
雪あかり
わが家の
亡き母と
手を触るる
灰色の
古渡りの
姉妹にて
髪重き
雪明り
01430
わが家の前を過ぎつつうらがなし家の中にて小鳥が歌ふ
ワガイエノ マエヲスギツツ ウラガナシ イエノナカニテ コトリガウタフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.195
01431
亡き母と行きしはどこの坂ならむ青き灯吊りて虫を売りゐき
ナキハハト ユキシハドコノ サカナラム アオキヒツリテ ムシヲウリヰキ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.195
01432
手を触るるものなべて凍る魔法などにこがれて過ぎし少女の日あり
テヲフルル モノナベテコオル マホウナドニ コガレテスギシ オトメノヒアリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.196
01433
灰色の靄のかぶさり来る夕べコーヒーの粉こぼれて匂ふ
ハイイロノ モヤノカブサリ クルユウベ コーヒーノコナ コボレテニオフ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.196
01434
古渡りの南蛮の壺割りし日よ好悪はげしき幼な子なりき
コワタリノ ナンバンノツボ ワリシヒヨ カウヲハゲシキ オサナゴナリキ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.196
01435
姉妹にてくらす身の上似かよへば声をかけあふ通りすがりに
シマイニテ クラスミノウエ ニカヨヘバ コエヲカケアフ トオリスガリニ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.197
01436
髪重き感じにゐしが昼過ぎて思ひ直せしごとく日のさす
カミオモキ カンジニヰシガ ヒルスギテ オモヒナオセシ ゴトクヒノサス
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.197
01437
雪明り窓にさす夜をめざめたる籠のインコのささめきあへり
ユキアカリ マドニサスヨヲ メザメタル カゴノインコノ ササメキアヘリ
『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.197