冬の渚


01446
花火の匂ひ残れる渚帰らぬと知りつつ待ちし年月思ふ
ハナビノニオヒ ノコレルナギサ カエラヌト シリツツマチシ トシツキオモフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.201
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (39)


01447
とぎれつつ砂地につづく靴のあと踏み砕かれし貝殻も見つ
トギレツツ スナジニツヅク クツノアト フミクダカレシ カイガラモミツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.201
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (40)


01448
音もなく石垣の裾を洗ひゐる波の穂先の光ることあり
オトモナク イシガキノスソヲ アラヒヰル ナミノホサキノ ヒカルコトアリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.202
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (41)


01449
賑はへるひととき過ぎて跳ね橋はうすくまたたく灯をつらねたり
ニギハヘル ヒトトキスギテ ハネバシハ ウスクマタタク ヒヲツラネタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.202
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (37)


01450
カーテンを引けば岬の見ゆる窓さわだつ波の遠景白し
カーテンヲ ヒケバミサキノ ミユルマド サワダツナミノ エンケイシロシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.202
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (38)


01451
砂山にハレルヤを歌ふ少女たち林の中は風がつめたし
スナヤマニ ハレルヤヲウタフ オトメタチ ハヤシノナカハ カゼガツメタシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.203
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (42)


01452
見残せし夢あるごとし地に降りて紫いろの影曳く鳩ら
ミノコセシ ユメアルゴトシ チニオリテ ムラサキイロノ カゲヒクハトラ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.203
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (43)


01453
足環を光らせて鳩の飛びたてり長かりし冬も終らむとして
アシクワンヲ ヒカラセテハトノ トビタテリ ナガカリシフユモ オワラムトシテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.203
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (44)