白き足裏


01465
駆けのぼるごとくにともるネオン見つ銀河を仰ぐよりも寂しく
カケノボル ゴトクニトモル ネオンミツ ギンガヲアオグ ヨリモサビシク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.208
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (29)


01466
吊るされてゐるはわが身と思ふまで画面に垂るる白き足裏
ツルサレテ ヰルハワガミト オモフマデ ガメンニタルル シロキアナウラ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.208
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (30)


01467
鎮まらぬこころのごとく夜もすがら風を集めて鳴る梢あり
シズマラヌ ココロノゴトク ヨモスガラ カゼヲアツメテ ナルコズエアリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.209
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (31)


01468
絵羽織の蘭の見る見るしぼみゆく夢より醒めててのひら寒し
エバオリノ ランノミルミル シボミユク ユメヨリサメテ テノヒラサムシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.209
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (32)


01469
亡きあとに知れるさみしさ陰口に猶太人と呼ばれてゐしことも聞く
ナキアトニ シレルサミシサ カゲグチニ ジユウトヨバレテ ヰシコトモキク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.209
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (33)


01470
沼の色たちまちくらみ中空に燃えゐし雲の錆びてひろがる
ヌマノイロ タチマチクラミ ナカゾラニ モエヰシクモノ サビテヒロガル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.210
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (34)


01471
なきがらが握りてゐたる石といふ小さき積石も埋め去られき
ナキガラガ ニギリテヰタル イシトイフ チサキケルンモ ウズメサラレキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.210
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (35)


01472
対岸の木の間は靄にとざされて水に残れるあはき夕映え
タイガンノ コノマハモヤニ トザサレテ ミズニノコレル アハキユウバエ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.210
【初出】 『短歌研究』 1965.5 海の記憶 (36)