目次
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全短歌(歌集等)
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花溢れゐき
春の帽子
ガラス戸の
ゆくりなく
父母の
墓原の
妹と
貝塚の
埋めたての
巻き貝の
触発を
かぶり見て
カドリール
緋の魚の
シチリヤの
くちずさむ
01596
ガラス戸の雨のしづくに灯がともり一つ一つのわれを過ぎゆく
ガラスドノ アメノシヅクニ ヒガトモリ ヒトツヒトツノ ワレヲスギユク
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.28
【初出】
『形成』 1966.9 「無題」 (4)
01597
ゆくりなく心は憩ふ勾玉のくぼみに溜まる埃拭きゐて
ユクリナク ココロハイコフ マガタマノ クボミニタマル ホコリフキヰテ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.28
【初出】
『形成』 1966.10 「無題」 (6)
01598
父母の声よみがへる季節かと河原にながく楤の芽を摘む
チチハハノ コエヨミガヘル キセツカト カワラニナガク タラノメヲツム
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.29
【初出】
『形成』 1966.5 「無題」 (4)
01599
墓原のほとりに棲める年月に聞き分けて烈し鴉の言葉
ハカハラノ ホトリニスメル トシツキニ キキワケテハゲシ カラスノコトバ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.29
【初出】
『形成』 1966.9 「無題」 (7)
01600
妹とくらす月日に梟の時計も古りて鳴かずなりたり
イモウトト クラスツキヒニ フクロウノ トケイモフリテ ナカズナリタリ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.29
【初出】
『形成』 1966.11 「無題」 (6)
01601
貝塚の跡しろじろと乾きゐてまぼろしの海はいづこより鳴る
カイヅカノ アトシロジロト カワキヰテ マボロシノウミハ イヅコヨリナル
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.30
【初出】
『形成』 1966.2 「無題」 (7)
01602
埋めたての成りし沼尻草萌えの色はいつしか砂礫を蔽ふ
ウメタテノ ナリシヌマジリ クサモエノ イロハイツシカ サレキヲオオフ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.30
【初出】
『形成』 1966.5 「無題」 (1)
01603
巻き貝の一粒をわがてのひらに置きて駆け去る女童も無き
マキガイノ イチリュウヲワガ テノヒラニ オキテカケサル メワラハモナキ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.30
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (98)
01604
触発を下待ちてゐたるわれかとも曇りの街を行きつつ思ふ
ショクハツヲ シタマチテヰタル ワレカトモ クモリノマチヲ ユキツツオモフ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.31
【初出】
『形成』 1966.11 「無題」 (2)
01605
かぶり見て人は買ひゆく純白の羽毛のそよぐ春の帽子を
カブリミテ ヒトハカヒユク ジュンパクノ ウモウノソヨグ ハルノボウシヲ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.31
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (81)
01606
カドリール踊る輪などのはずみつつ映る影絵もながく続かず
カドリール オドルワナドノ ハズミツツ ウツルカゲエモ ナガクツヅカズ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.31
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (94)
01607
緋の魚のむらがりて来る夢なりき目ざめし闇に水の音する
ヒノウオノ ムラガリテクル ユメナリキ メザメシヤミニ ミズノオトスル
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.32
【初出】
『形成』 1966.7 「無題」 (3)
01608
シチリヤの島をいろどる花と告げてスヰートピーの種子送り来ぬ
シチリヤノ シマヲイロドル ハナトツゲテ スヰートピーノ シュシオクリキヌ
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.32
【初出】
『形成』 1966.2 「無題」 (1)
01609
くちずさむミニヨンの歌インコらの卵は何の色に孵らむ
クチズサム ミニヨンノウタ インコラノ タマゴハナンノ イロニカヘラム
『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.32
【初出】
『形成』 1966.3 「無題」 (5)