しろがねの雨


02138
影のやうなこだまのやうなわれとなり散らばりやすし噴水の穂は
カゲノヤウナ コダマノヤウナ ワレトナリ チラバリヤスシ フンスイノホハ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.222
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (1)


02139
待つこころふと遠のきて籐椅子に置ける団扇のかたちがやさし
マツココロ フトトオノキテ トウイスニ オケルウチワノ カタチガヤサシ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.222
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (2)


02140
知り得たることのわが身に傷なすを芝生にそそぐしろがねの雨
シリエタル コトノワガミニ キズナスヲ シバフニソソグ シロガネノアメ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.223
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (3)


02141
打たむとし大き平手を人は挙ぐすばやくわれの去りし画面に
ウタムトシ オオキヒラテヲ ヒトハアグ スバヤクワレノ サリシガメンニ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.223
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (4)


02142
われの手に葬りし人の数知れず海芋の白は喪の花のいろ
ワレノテニ ホウムリシヒトノ カズシレズ カイウノシロハ モノハナノイロ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.223
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (5)


02143
帰らむといふをふたたび坐らしむ容易にやまぬ雨と知りつつ
カエラムト イフヲフタタビ スワラシム ヨウイニヤマヌ アメトシリツツ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.224
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (6)


02144
やみがたくくだりゆきては灯をともしモルグのごとき地下室の書庫
ヤミガタク クダリユキテハ ヒヲトモシ モルグノゴトキ チカシツノショコ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.224
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (7)


02145
ジャケットのダミアの顔と気づくまで目をこらしゐて闇の深さよ
ジャケットノ ダミアノカオト キヅクマデ メヲコラシヰテ ヤミノフカサヨ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.224
【初出】 『短歌公論』 1970.9.25 しろがねの雨 (8)