目次
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全短歌(歌集等)
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雲の地図
犬の名
とめどなく
曖昧に
替へてやる
千に刻み
機械的な
絹の裏を
風の無き
読まれゐし
牙むくと
道を尋ねて
雪柳の
02244
とめどなく降り来て棕櫚の葉を鳴らす雪のさびしさ棕櫚のさびしさ
トメドナク フリキテシュロノ ハヲナラス ユキノサビシサ シュロノサビシサ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.36
【初出】
『形成』 1971.5 「無題」 (4)
02245
曖昧にゐるわれを措き妹のきびきびと朝の身仕舞ひをなす
アイマイニ ヰルワレヲオキ イモウトノ キビキビトアサノ ミジマヒヲナス
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.36
【初出】
『形成』 1971.4 「無題」 (5)
02246
替へてやる亡き犬の水朝々にかなしみてなす仕事の一つ
カヘテヤル ナキイヌノミズ アサアサニ カナシミテナス シゴトノヒトツ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.37
【初出】
『形成』 1971.10 「無題」 (5)
02247
千に刻み水に放てる大根の向き向きに沈むさまの華やぐ
センニキザミ ミズニハナテル ダイコンノ ムキムキニシズム サマノハナヤグ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.37
【初出】
『形成』 1971.5 「無題」 (7)
02248
機械的な処理に慣れつつ稀にゐる家にてわれのいさぎよからず
キカイテキナ ショリニナレツツ マレニヰル イエニテワレノ イサギヨカラズ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.37
【初出】
『形成』 1972.1 「無題」 (1)
02249
絹の裏をつけて着やすく縫ひあげぬ働くときにまとふブラウス
キヌノウラヲ ツケテキヤスク ヌヒアゲヌ ハタラクトキニ マトフブラウス
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.38
【初出】
『形成』 1971.6 「無題」 (2)
02250
風の無き一日を出でて反故を焚き古りし思ひのなべて燻らす
カゼノナキ ヒトヒヲイデテ ホゴヲタキ フリシオモヒノ ナベテクユラス
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.38
【初出】
『形成』 1971.7 「無題」 (1)
02251
読まれゐし日記のことを知らざりき十五年経て痣のごとしも
ヨマレヰシ ニッキノコトヲ シラザリキ ジュウゴネンヘテ アザノゴトシモ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.38
【初出】
『形成』 1972.1 「無題」 (5)
02252
牙むくといふことのなきわが上を弱しと決めて妹もゐる
キバムクト イフコトノナキ ワガウヘヲ ヨワシトキメテ イモウトモヰル
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.39
【初出】
『形成』 1971.8 「無題」 (1)
02253
道を尋ねてゐしがたちまち修道女の顔に戻りて歩み去りたり
ミチヲタズネテ ヰシガタチマチ シスターノ カオニモドリテ アユミサリタリ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.39
【初出】
『形成』 1972.2 「無題」 (2)
02254
雪柳の花のこまごま散りそめぬ帰ることなき犬の名を呼ぶ
ユキヤナギノ ハナノコマゴマ チリソメヌ カエルコトナキ イヌノナヲヨブ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.39
【初出】
『形成』 1971.6 「無題」 (6)