風吹く森


02262
薔薇も芙蓉も嵐の夜の影となり心ゆくまでゆさぶられゐる
バラモフヨウモ アラシノヨルノ カゲトナリ ココロユクマデ ユサブラレヰル

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.43


02263
葉脈のくぼみにたまる打ち水のふと輝くはしづくするとき
ヨウミャクノ クボミニタマル ウチミズノ フトカガヤクハ シヅクスルトキ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.43


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泉より醒めくる旅の記憶にておもだかの花は薄きくれなゐ
イズミヨリ サメクルタビノ キオクニテ オモダカノハナハ ウスキクレナヰ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.44


02265
夜の音と思ひてまなこ閉ぢをれば風吹く森も遠くはあらず
ヨノオトト オモヒテマナコ トヂヲレバ カゼフクモリモ トオクハアラズ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.44


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花火焚きしあとの気になり出でて来てふたたび仰ぐこよひの銀河
ハナビタキシ アトノキニナリ イデテキテ フタタビアオグ コヨヒノギンガ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.44