目次
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全短歌(歌集等)
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雲の地図
ふと遠のきて
長く生きて
雨に暮るる
ビニールの
指先に
混みあへる
何事を
帰り来て
空間を
02267
長く生きてやすらひがたき手相とぞ菜を洗ひつつ刻みつつ思ふ
ナガクイキテ ヤスラヒガタキ テソウトゾ ナヲアラヒツツ キザミツツオモフ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.45
【初出】
『形成』 1970.11 「無題」 (4)
02268
雨に暮るる庭の片隅花咲かず枯れもせず三年たつ躑躅あり
アメニクルル ニワノカタスミ ハナサカズ カレモセズサンネン タツツツジアリ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.45
02269
ビニールの袋をたたみてかさねつつ次第にやさしき曇り帯びゆく
ビニールノ フクロヲタタミテ カサネツツ シダイニヤサシキ クモリオビユク
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.46
【初出】
『形成』 1971.1 「無題」 (1)
02270
指先に力こもりて絞らるるレモンを見ゐつふと遠のきて
ユビサキニ チカラコモリテ シボラルル レモンヲミヰツ フトトオノキテ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.46
【初出】
『形成』 1971.9 「無題」 (4)
02271
混みあへる浴衣売り場の人形は少し反り身に日傘をさせり
コミアヘル ユカタウリバノ ニンギョウハ スコシソリミニ ヒガサヲサセリ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.46
【初出】
『形成』 1971.9 「無題」 (3)
02272
何事を知りたる人か道に会ひて隔てがましき礼なしゆけり
ナニゴトヲ シリタルヒトカ ミチニアヒテ ヘダテガマシキ ヰヤナシユケリ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.47
【初出】 『短歌研究』 1972.1 しのぎて在りて (58)
02273
帰り来て妹は笑ふ雑踏を抜くるに速きわれの歩みを
カエリキテ イモウトハワラフ ザツトウヲ ヌクルニハヤキ ワレノアユミヲ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.47
02274
空間を一直線にわれに来る向日葵の黄とその芯の黒
クウカンヲ イッチョクセンニ ワレニクル ヒマワリノキト ソノシンノクロ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.47
【初出】
『形成』 1971.11 「無題」 (1)