目次
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全短歌(歌集等)
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雲の地図
空からこはれて
山脈も
確かめたき
花びらの
指人形の
隔たりを
いつも誰かを
夕焼けが
点線を
長き雨
薄青く
02275
山脈も芽ぐむ木立も遠く澄み空からこはれてくるやうな日よ
サンミャクモ メグムコダチモ トオクスミ ソラカラコハレテ クルヤウナヒヨ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.48
02276
確かめたきことのあるとき額ぶちに嵌め込まれゐる木の一部分
タシカメタキ コトノアルトキ ガクブチニ ハメコマレヰル キノイチブブン
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.48
02277
花びらのゆるみゐし薔薇カーテンの襞に触れたるのみに崩るる
ハナビラノ ユルミヰシバラ カーテンノ ヒダニフレタル ノミニクズルル
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49
【初出】
『おおみや』 1972.1 風の凪ぐとき (5)
02278
指人形の少女が持てる花籠に花の無かりしことのみ思ふ
ギニヨールノ オトメガモテル ハナカゴニ ハナノナカリシ コトノミオモフ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49
02279
隔たりを隔たりとして置くゆゑか暮れゆく街が窓に美し
ヘダタリヲ ヘダタリトシテ オクユヱカ クレユクマチガ マドニウツクシ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49
02280
いつも誰かを探してゐるやうなわれの目と気づきて見やる遠き木立を
イツモタレカヲ サガシテヰルヤウナ ワレノメト キヅキテミヤル トオキコダチヲ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50
02281
夕焼けが褪せゆく街の灰いろに影にじませて立つ木も人も
ユウヤケガ アセユクマチノ ハイイロニ カゲニジマセテ タツキモヒトモ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50
02282
点線を斜に幾重にも引けば雨の街となる少女らの絵は
テンセンヲ ナナメニイクヘ ニモヒケバ アメノマチトナル オトメラノエハ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50
02283
長き雨あがらむとして日のくれを水晶のやうに光りつつ降る
ナガキアメ アガラムトシテ ヒノクレヲ スイショウノヤウニ ヒカリツツフル
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.51
02284
薄青くコップは乾き割れやすい五月の朝の空を思はす
ウスアオク コップハカワキ ワレヤスイ サツキノアサノ ソラヲオモハス
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.51