空からこはれて


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山脈も芽ぐむ木立も遠く澄み空からこはれてくるやうな日よ
サンミャクモ メグムコダチモ トオクスミ ソラカラコハレテ クルヤウナヒヨ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.48


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確かめたきことのあるとき額ぶちに嵌め込まれゐる木の一部分
タシカメタキ コトノアルトキ ガクブチニ ハメコマレヰル キノイチブブン

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.48


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花びらのゆるみゐし薔薇カーテンの襞に触れたるのみに崩るる
ハナビラノ ユルミヰシバラ カーテンノ ヒダニフレタル ノミニクズルル

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49
【初出】 『おおみや』 1972.1 風の凪ぐとき (5)


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指人形の少女が持てる花籠に花の無かりしことのみ思ふ
ギニヨールノ オトメガモテル ハナカゴニ ハナノナカリシ コトノミオモフ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49


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隔たりを隔たりとして置くゆゑか暮れゆく街が窓に美し
ヘダタリヲ ヘダタリトシテ オクユヱカ クレユクマチガ マドニウツクシ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49


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いつも誰かを探してゐるやうなわれの目と気づきて見やる遠き木立を
イツモタレカヲ サガシテヰルヤウナ ワレノメト キヅキテミヤル トオキコダチヲ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50


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夕焼けが褪せゆく街の灰いろに影にじませて立つ木も人も
ユウヤケガ アセユクマチノ ハイイロニ カゲニジマセテ タツキモヒトモ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50


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点線を斜に幾重にも引けば雨の街となる少女らの絵は
テンセンヲ ナナメニイクヘ ニモヒケバ アメノマチトナル オトメラノエハ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50


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長き雨あがらむとして日のくれを水晶のやうに光りつつ降る
ナガキアメ アガラムトシテ ヒノクレヲ スイショウノヤウニ ヒカリツツフル

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.51


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薄青くコップは乾き割れやすい五月の朝の空を思はす
ウスアオク コップハカワキ ワレヤスイ サツキノアサノ ソラヲオモハス

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.51