目次
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全短歌(歌集等)
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雲の地図
うすらかに
うすらかに
花過ぎて
始まりも
結び目は
時計塔の
02327
うすらかに鰭をまとはむ満たしたる真水のやうな朝が来てゐる
ウスラカニ ヒレヲマトハム ミタシタル マミヅノヤウナ アサガキテヰル
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.67
02328
花過ぎてリラの若葉の翳る窓魚らは水に倦む日の無きか
ハナスギテ リラノワカバノ カゲルマド ウヲラハミズニ ウムヒノナキカ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.67
02329
始まりも終りも知らず生きゐると小さく署名なすとき思ふ
ハジマリモ オワリモシラズ イキヰルト チイサクショメイ ナストキオモフ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.68
02330
結び目はみな解きはなせ降るやうに楓の花の散り敷く日なり
ムスビメハ ミナトキハナセ フルヤウニ カエデノハナノ チリシクヒナリ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.68
02331
時計塔のあたりにいまだ日の残り人はゆきかふ地上の闇を
トケイトウノ アタリニイマダ ヒノノコリ ヒトハユキカフ チジョウノヤミヲ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.68