目次
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全短歌(歌集等)
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雲の地図
妹は見ず
草むらの
分身の
病みあとの
つまづきて
醒めゆかば
思ひゐし
生きてあらば
定規あてて
そのほかの
銀いろの
腋寒く
02452
草むらの底にみひらくこの春のたんぽぽの花も妹は見ず
クサムラノ ソコニミヒラク コノハルノ タンポポノハナモ イモウトハミズ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.111
【初出】
『形成』 1973.6 「無題」 (2)
02453
分身のごとくにありし欅の木芽ぶきて大きひろがりをなす
ブンシンノ ゴトクニアリシ ケヤキノキ メブキテオオキ ヒロガリヲナス
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.111
【初出】
『形成』 1973.6 「無題」 (6)
02454
病みあとの覚束なきに咲きみちて息を溜めゐるごとし桜は
ヤミアトノ オボツカナキニ サキミチテ イキヲタメヰル ゴトシサクラハ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.112
02455
つまづきて足もとを見しときのまに身に憑きゐたる何か失ふ
ツマヅキテ アシモトヲミシ トキノマニ ミニツキヰタル ナニカウシナフ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.112
【初出】
『形成』 1971.8 「無題」 (6)
02456
醒めゆかば如何にかさびし少年の聖歌コーラス澄みて続ける
サメユカバ イカニカサビシ ショウネンノ セイカコーラス スミテツヅケル
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.112
【初出】
『形成』 1973.8 「無題」 (3)
02457
思ひゐしことのとぎれてかたはらの薔薇はくるめく花びらの渦
オモヒヰシ コトノトギレテ カタハラノ バラハクルメク ハナビラノウズ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.113
02458
生きてあらばいかに歎かむつぎつぎに薬飲み足し起きゐるわれを
イキテアラバ イカニナゲカム ツギツギニ クスリノミタシ オキヰルワレヲ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.113
【初出】
『形成』 1973.1 「無題」 (7)
02459
定規あてて罫を引きゐるあひだだけ何もかも忘れてゐしわれならむ
ジョウギアテテ ケイヲヒキヰル アヒダダケ ナニモカモワスレテ ヰシワレナラム
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.113
【初出】
『形成』 1973.1 「無題」 (6)
02460
そのほかの費し方を問はずしてわがために生を終へし妹
ソノホカノ ツイヤシカタヲ トハズシテ ワガタメニシヤウヲ オヘシイモウト
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.114
【初出】
『形成』 1973.1 「無題」 (5)
02461
銀いろのポールが立ちてゆれゐたり旗のあがらぬ今日のしづけさ
ギンイロノ ポールガタチテ ユレヰタリ ハタノアガラヌ キョウノシヅケサ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.114
【初出】
『形成』 1973.1 「無題」 (3)
02462
腋寒く見てゐるものを啼くこともあらずうかべる白鳥のむれ
ワキサムク ミテヰルモノヲ ナクコトモ アラズウカベル ハクチヨウノムレ
『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.114
【初出】
『形成』 1973.1 「無題」 (4)