かすかなる飢ゑ


02953
ほほづきの葉脈のみとなる洞に夕陽のごとし実の色づくは
ホホヅキノ ヨウミャクノミト ナルウロニ ユウヒノゴトシ ミノイロヅクハ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.70
【初出】 『短歌研究』 1976.3 かすかなる飢ゑ (3)


02954
傷つきて知るほかなきに雪原の夜更けを渡るたれの足音
キズツキテ シルホカナキニ セツゲンノ ヨフケヲワタル タレノアシオト

『野分の章』(牧羊社 1978) p.70
【初出】 『短歌研究』 1976.3 かすかなる飢ゑ (2)


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バスを待つ間にシャッターのおろされて時計屋の店も一枚の壁
バスヲマツ マニシャッターノ オロサレテ トケイヤノミセモ イチマイノカベ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.71
【初出】 『短歌研究』 1976.3 かすかなる飢ゑ (5)


02956
千代紙の色を変へつつ折りてゆく鹿もスワンも同じ大きさ
チヨガミノ イロヲカヘツツ オリテユク シカモスワンモ オナジオオキサ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.71
【初出】 『短歌研究』 1976.3 かすかなる飢ゑ (6)


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かすかなる飢ゑに目ざめてみひらきぬ飢ゑの意識はいづこより湧く
カスカナル ウヱニメザメテ ミヒラキヌ ウヱノイシキハ イヅコヨリワク

『野分の章』(牧羊社 1978) p.71
【初出】 『短歌研究』 1976.3 かすかなる飢ゑ (7)