目次
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全短歌(歌集等)
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野分の章
ホモ・エレクトス
表皮より
働くことは
鳴り出づる
真っすぐに
五階より
働きて
権力に
はればれと
洗車場より
帰り来て
食べよとも
02958
表皮より剝きつつ使ふ幾朝にキャベツの軽くなるにもあらず
ヒョウヒヨリ ムキツツツカフ イクアサニ キャベツノカルク ナルニモアラズ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.72
【初出】
『形成』 1976.2 「無題」 (1)
02959
働くことは縛むること煩悩の人より濃ゆきわがあけくれに
ハタラクコトハ イマシムルコト ボンノウノ ヒトヨリコユキ ワガアケクレニ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.72
【初出】
『形成』 1976.4 「無題」 (1)
02960
鳴り出づるチャイムを待ちてゐるわれか稀の家居に水使ひつつ
ナリイヅル チャイムヲマチテ ヰルワレカ マレノイエイニ ミズツカヒツツ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.73
【初出】
『形成』 1976.2 「無題」 (2)
02961
真っすぐに立つといふこのさびしさよ花の終れる向日葵の茎
マッスグニ タツトイフコノ サビシサヨ ハナノオワレル ヒマワリノクキ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.73
【初出】
『形成』 1976.2 「無題」 (3)
02962
五階より見おろす夜明け街灯はうすらみどりになりて消えたる
ゴカイヨリ ミオロスヨアケ ガイトウハ ウスラミドリニ ナリテキエタル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.73
【初出】
『形成』 1976.2 「無題」 (4)
02963
働きて互みに経たる十年に美しかりしタイピストも老いぬ
ハタラキテ カタミニヘタル ジュウネンニ ウツクシカリシ タイピストモオイヌ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.74
【初出】
『形成』 1976.2 「無題」 (5)
02964
権力に屈するごとく屈するを病のゆゑといへどさびしむ
ケンリョクニ クッスルゴトク クッスルヲ ヤマイノユヱト イヘドサビシム
『野分の章』(牧羊社 1978) p.74
【初出】
『形成』 1976.4 「無題」 (3)
02965
はればれと歩むならねば午後三時ビルのあはひのくらがりもよし
ハレバレト アユムナラネバ ゴゴサンジ ビルノアハヒノ クラガリモヨシ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.74
【初出】
『形成』 1976.4 「無題」 (4)
02966
洗車場より出づる車に心まで清めしごとき助手席の顔
センシャジョウヨリ イヅルクルマニ ココロマデ キヨメシゴトキ ジョシュセキノカオ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.75
【初出】
『形成』 1976.2 「無題」 (6)
02967
帰り来て帽子をぬげば絵に見たる原人もわれの顔もかはらぬ
カエリキテ ボウシヲヌゲバ エニミタル ゲンジンモワレノ カオモカハラヌ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.75
【初出】
『形成』 1976.2 「無題」 (7)
02968
食べよとも寝よともたれも言はざれば目をしばたたく夜の明け近く
タベヨトモ ネヨトモタレモ イハザレバ メヲシバタタク ヨノアケチカク
『野分の章』(牧羊社 1978) p.75
【初出】
『形成』 1976.4 「無題」 (7)