目次
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全短歌(歌集等)
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野分の章
透明の櫛
ガラスごしの
決めゐたる
夕立の
透明の
逢ひがたき
すきとほる
霧のなかに
わが呼びし
03003
ガラスごしの半径のなか一面に木の葉さわだつ雨に打たれて
ガラスゴシノ ハンケイノナカ イチメンニ コノハサワダツ アメニウタレテ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.88
03004
決めゐたる指輪も忘れて出でて来ぬ告げてはならぬことのみ多き
キメヰタル ユビワモワスレテ イデテキヌ ツゲテハナラヌ コトノミオオキ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.88
03005
夕立のあとの茜を仰ぎ来て風見のゆるくまはれるに会ふ
ユウダチノ アトノアカネヲ アオギキテ カザミノユルク マハレルニアフ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.89
03006
透明の櫛のごときを思ひつつ仰ぎてをればゆらぐ篁
トウメイノ クシノゴトキヲ オモヒツツ アオギテヲレバ ユラグタカムラ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.89
03007
逢ひがたき日を重ねつつ町角に青くともれる電話ボックス
アヒガタキ ヒヲカサネツツ マチカドニ アオクトモレル デンワボックス
『野分の章』(牧羊社 1978) p.89
03008
すきとほるタイそよがせて歩むとも紛らはし得むさびしさならず
スキトホル タイソヨガセテ アユムトモ マギラハシエム サビシサナラズ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.90
03009
霧のなかに幾日もゐし思ひしてタオルをひたすつめたき水に
キリノナカニ イクニチモヰシ オモヒシテ タオルヲヒタス ツメタキミズニ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.90
03010
わが呼びし声のきこゆる夜もあらむ他界の女の声のごとくに
ワガヨビシ コエノキコユル ヨモアラム タカイノオンナノ コエノゴトクニ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.90