目次
/
全短歌(歌集等)
/
野分の章
人形の靴
背信に
どこまでも
矢印の
少女らの
引力の
人の名を
コンテナの
破滅型の
映像は
散りそめし
ロジェ・ガレの
03040
背信に紙一重なる思ひして見返るビルはかすか茜す
ハイシンニ カミヒトエナル オモヒシテ ミカエルビルハ カスカアカネス
『野分の章』(牧羊社 1978) p.104
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (1)
03041
どこまでも犬として野を遠ざかる日ぐれはさびしむらがるものも
ドコマデモ イヌトシテノヲ トオザカル ヒグレハサビシ ムラガルモノモ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.104
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (2)
03042
矢印の方へは行かず帰り来ぬつぼみの薔薇を買ひたるのみに
ヤジルシノ カタヘハユカズ カエリキヌ ツボミノバラヲ カヒタルノミニ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.105
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (3)
03043
少女らの覗きてすぎし飾り窓人形は繻子のトーシューズ履く
オトメラノ ノゾキテスギシ カザリマド ニンギョウハシュスノ トーシューズハク
『野分の章』(牧羊社 1978) p.105
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (4)
03044
引力のやさしき日なり黒土に輪をひろげゆく銀杏の落ち葉
インリョクノ ヤサシキヒナリ クロツチニ ワヲヒロゲユク イチョウノオチバ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.105
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (5)
03045
人の名を呼ぶアナウンス間をおきてくり返されぬ霧の操車場に
ヒトノナヲ ヨブアナウンス マヲオキテ クリカエサレヌ キリノヤードニ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.106
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (6)
03046
コンテナの雪にまみれて停りゐきわれはわが持つものを怖れき
コンテナノ ユキニマミレテ トマリヰキ ワレハワガモツ モノヲオソレキ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.106
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (7)
03047
破滅型のもう一人のわれがひろげたる翼の隙を突かるる勿れ
ハメツガタノ モウヒトリノワレガ ヒロゲタル ツバサノスキヲ ツカルルナカレ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.106
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (8)
03048
映像はかくまざまざと二つめのむくろのありし位置を伝ふる
エイゾウハ カクマザマザト フタツメノ ムクロノアリシ イチヲツタフル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.107
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (9)
03049
散りそめし薔薇のたちまち散りつくすかかる速度にも堪へねばならず
チリソメシ バラノタチマチ チリツクス カカルソクドニモ タヘネバナラズ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.107
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (10)
03050
ロジェ・ガレの香水といへり部屋中に撒きて無頼の一日も終る
ロジェガレノ コウスイトイヘリ ヘヤジュウニ マキテブライノ ヒトヒモオワル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.107
【初出】
『短歌』 1977.1 人形の靴 (11)