春の雪


03051
茶の湯など習ひて若き日のありきグラスの縁の口紅を拭く
チャノユナド ナラヒテワカキ ヒノアリキ グラスノフチノ クチベニヲフク

『野分の章』(牧羊社 1978) p.108
【初出】 『短歌公論』 1977.1 春の雪 (1)


03052
一枚一枚瓦を屋根に置く仕事窓をしめても音のきこゆる
イチマイイチマイ カワラヲヤネニ オクシゴト マドヲシメテモ オトノキコユル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.108
【初出】 『短歌公論』 1977.1 春の雪 (2)


03053
夢にさへ何か足りない思ひしてスフレ乗せゐきケーキの皿に
ユメニサヘ ナニカタリナイ オモヒシテ スフレノセヰキ ケーキノサラニ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.109
【初出】 『短歌公論』 1977.1 春の雪 (3)


03054
アスワン・ダムの貯水量など忽ちに忘るるものをなぜ忘れ得ぬ
アスワンダムノ チョスイリョウナド タチマチニ ワスルルモノヲ ナゼワスレエヌ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.109
【初出】 『短歌公論』 1977.1 春の雪 (4)


03055
妹の分も生きよと言はれしが墓碑をうづめて春の雪降る
イモウトノ ブンモイキヨト イハレシガ ボヒヲウヅメテ ハルノユキフル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.109
【初出】 『短歌公論』 1977.1 春の雪 (5)