もろともに


03056
どこまでも崩せば崩れてしまふゆゑ寝る前の髪をきりきりと巻く
ドコマデモ クズセバクズレテ シマフユヱ ネルマエノカミヲ キリキリトマク

『野分の章』(牧羊社 1978) p.110
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (1)


03057
ボタンホールかがりつつ思ふ指先の器用はたれに似しと言はれき
ボタンホール カガリツツオモフ ユビサキノ キヨウハタレニ ニシトイハレキ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.110
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (2)


03058
忘れゐる幸せならむひとたびも打擲といふを受けしことなき
ワスレヰル シアワセナラム ヒトタビモ チョウチャクトイフヲ ウケシコトナキ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.111
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (3)


03059
よぎらむとして怯みたり駅前は午後の濁色濁音広場
ヨギラムト シテヒルミタリ エキマエハ ゴゴノダクショク ダクオンヒロバ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.111
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (4)


03060
あるまじきものと思へど絵のなかに空いろの大き果実が坐る
アルマジキ モノトオモヘド エノナカニ ソライロノオオキ カジツガスワル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.111
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (5)


03061
傾きてありたるバイク直立し少年を乗せて忽ちに去る
カタムキテ アリタルバイク チョクリツシ ショウネンヲノセテ タチマチニサル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.112
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (6)


03062
朝食のデミタスカップおもたしと思へるひまに遠くへだたる
チョウショクノ デミタスカップ オモタシト オモヘルヒマニ トオクヘダタル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.112
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (7)


03063
トルソーか何かにひしと阻まれて見えざりし部分夢と思へず
トルソーカ ナニカニヒシト ハバマレテ ミエザリシブブン ユメトオモヘズ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.112
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (8)


03064
もろともに束ねて燃してしまひたき何ならむ反故を燃しつつ思ふ
モロトモニ タバネテモシテ シマヒタキ ナニナラムホゴヲ モシツツオモフ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.113
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (9)


03065
シャギーの帽子かぶりて耳が暖し越え得しと思ふまた一つ危機
シャギーノ ボウシカブリテ ミミガアタタカシ コエエシトオモフ マタヒトツキキ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.113
【初出】 『短歌研究』 1977.3 もろともに (10)