印度の鈴


03066
機械さへ悪意持つかと思ふまでテレファックスの像定まらず
キカイサヘ アクイモツカト オモフマデ テレファックスノ ゾウサダマラズ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.114
【初出】 『形成』 1977.3 「無題」 (1)


03067
表情を崩すことなく聞き終へてぐらぐらとせり立ちあがるとき
ヒョウジョウヲ クズスコトナク キキオヘテ グラグラトセリ タチアガルトキ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.114
【初出】 『形成』 1977.3 「無題」 (2)


03068
太陽に頭上を通過されしのみと読みたり無為を歎く言葉に
タイヨウニ ズジョウヲツウカ サレシノミト ヨミタリムイヲ ナゲクコトバニ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.115
【初出】 『形成』 1977.3 「無題」 (3)


03069
両の手を合はせし闇をうち振ればほろほろと鳴る印度の鈴は
リョウノテヲ アハセシヤミヲ ウチフレバ ホロホロトナル インドノスズハ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.115
【初出】 『形成』 1977.3 「無題」 (4)


03070
数へ切れぬ傷と思へど磨きたるガラスの向うは草萌えの丘
カゾヘキレヌ キズトオモヘド ミガキタル ガラスノムコウハ クサモエノオカ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.115
【初出】 『形成』 1977.3 「無題」 (5)


03071
肩口より冷えつつ醒めてきららかに身に帯びゐたる鱗もあらず
カタグチヨリ ヒエツツサメテ キララカニ ミニオビヰタル ウロコモアラズ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.116
【初出】 『形成』 1977.3 「無題」 (6)


03072
早梅の咲くころならむ薬品の名も新しく知りて癒えゆく
ハヤウメノ サクコロナラム ヤクヒンノ ナモアタラシク シリテイエユク

『野分の章』(牧羊社 1978) p.116
【初出】 『形成』 1977.3 「無題」 (7)