目次
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全短歌(歌集等)
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野分の章
意識して
手を振りて
枝先の
待つことも
会ひがたき
わが今の
雪の夜の
語りあふ
労働に
03073
手を振りて別れ来にしが本名を告ぐることなくながくつきあふ
テヲフリテ ワカレキニシガ ホンミョウヲ ツグルコトナク ナガクツキアフ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.117
【初出】
『形成』 1977.5 「無題」 (1)
03074
枝先の鵙を見をれば意識して危ふきことをなすかと思ふ
エダサキノ モズヲミヲレバ イシキシテ アヤフキコトヲ ナスカトオモフ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.117
【初出】
『形成』 1977.5 「無題」 (3)
03075
待つことも仕事の一つビルの上に奇形の雲のながくとどまる
マツコトモ シゴトノヒトツ ビルノウエニ キケイノクモノ ナガクトドマル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.118
【初出】
『形成』 1977.5 「無題」 (2)
03076
会ひがたき人となりたり約束の一つをわれの果たしし日より
アヒガタキ ヒトトナリタリ ヤクソクノ ヒトツヲワレノ ハタシシヒヨリ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.118
【初出】
『形成』 1977.5 「無題」 (7)
03077
わが今の立場思へば毛皮などをなべてむかれし寒さのごとき
ワガイマノ タチバオモヘバ ケガワナドヲ ナベテムカレシ サムサノゴトキ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.118
【初出】
『形成』 1977.5 「無題」 (4)
03078
雪の夜のいづこともなくとざされておもたき鉄の一枚扉
ユキノヨノ イヅコトモナク トザサレテ オモタキテツノ イチマイトビラ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.119
【初出】
『形成』 1977.5 「無題」 (5)
03079
語りあふさま座席より仰ぐとき牙のごときを人間も持つ
カタリアフ サマザセキヨリ アオグトキ キバノゴトキヲ ニンゲンモモツ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.119
【初出】
『形成』 1977.5 「無題」 (6)
03080
労働にすさむは言葉のみならずレモンの酸の舌先に沁む
ロウドウニ スサムハコトバ ノミナラズ レモンノサンノ シタサキニシム
『野分の章』(牧羊社 1978) p.119
【初出】
『形成』 1976.9 「無題」 (1)