負ひめなるべし


03180
へだたりを埋めゆくは瓦礫のみならむ風に言葉のさらはれ易し
ヘダタリヲ ウメユクハガレキ ノミナラム カゼニコトバノ サラハレヤスシ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.158
【初出】 『短歌研究』 1978.3 負ひめなるべし (1)


03181
をりをりに人に呼ばれて答へつつ死者のたれにも似ぬわが声よ
ヲリヲリニ ヒトニヨバレテ コタヘツツ シシャノタレニモ ニヌワガコエヨ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.158
【初出】 『短歌研究』 1978.3 負ひめなるべし (2)


03182
毬藻のやうに描くを見れば子らが見てわれには見えぬ雲にあくがる
マリモノヤウニ エガクヲミレバ コラガミテ ワレニハミエヌ クモニアクガル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.159
【初出】 『短歌研究』 1978.3 負ひめなるべし (3)


03183
散弾の嵐をくぐり帰り来し鳩かと思ふまでにきらめく
サンダンノ アラシヲクグリ カエリコシ ハトカトオモフ マデニキラメク

『野分の章』(牧羊社 1978) p.159
【初出】 『短歌研究』 1978.3 負ひめなるべし (4)


03184
待ちあぐむかなしみのみに過ぎ来しが負ひめなるべし待たるることも
マチアグム カナシミノミニ スギコシガ オヒメナルベシ マタルルコトモ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.159
【初出】 『短歌研究』 1978.3 負ひめなるべし (5)


03185
見張られてゐたる意識の残りつつ何を犯しし夢とも知れず
ミハラレテ ヰタルイシキノ ノコリツツ ナニヲオカシシ ユメトモシレズ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.160
【初出】 『短歌研究』 1978.3 負ひめなるべし (6)


03186
朝霧にともしてバスのゆきかへば見失ふごとしわが顔なども
アサギリニ トモシテバスノ ユキカヘバ ミウシナフゴトシ ワガカオナドモ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.160
【初出】 『短歌研究』 1978.3 負ひめなるべし (7)