目次
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全短歌(歌集等)
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野分の章
馬の祭り
思はざる
香を焚く
父母の
しどけなく
散らばりし
終りさへ
裸馬の
知らざりし
告げざれば
外側から
03213
思はざる恵みのごとく暖かき数日ありて周囲ととのふ
オモハザル メグミノゴトク アタタカキ スウジツアリテ シュウイトトノフ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.171
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (1)
03214
香を焚くほかあらぬかなたのしみの待つ如く帰り来りし家に
カウヲタク ホカアラヌカナ タノシミノ マツゴトクカエリ キタリシイエニ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.171
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (2)
03215
父母の墓さへあらぬふるさとの馬の祭りをテレビは見しむ
チチハハノ ハカサヘアラヌ フルサトノ ウマノマツリヲ テレビハミシム
『野分の章』(牧羊社 1978) p.172
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (3)
03216
しどけなく笑へる写真幾枚もとられてゐしは暴力に似る
シドケナク ワラヘルシャシン イクマイモ トラレテヰシハ ボウリョクニニル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.172
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (4)
03217
散らばりし意識の跡も敢へ無くて昨日書きたる文字正しゆく
チラバリシ イシキノアトモ アヘナクテ キノウカキタル モジタダシユク
『野分の章』(牧羊社 1978) p.172
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (5)
03218
終りさへすればとのみに励む夜をくり返しつつ年逝かむとす
オワリサヘ スレバトノミニ ハゲムヨヲ クリカエシツツ トシユカムトス
『野分の章』(牧羊社 1978) p.173
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (6)
03219
裸馬の一頭戻りくるシーン夕焼け沙漠を背景として
ハダカウマノ イットウモドリ クルシーン ユウヤケサバクヲ ハイケイトシテ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.173
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (7)
03220
知らざりし一面見せてゆるやかにベビーカーなど押して歩むよ
シラザリシ イチメンミセテ ユルヤカニ ベビーカーナド オシテアユムヨ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.173
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (8)
03221
告げざれば思はぬことと等しからむ告げずに思ふことの殖えゆく
ツゲザレバ オモハヌコトト ヒトシカラム ツゲズニオモフ コトノフエユク
『野分の章』(牧羊社 1978) p.174
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (9)
03222
外側から変へゆくすべもあるらむか同じ形に髪の整ふ
ソトガワカラ カヘユクスベモ アルラムカ オナジカタチニ カミノトトノフ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.174
【初出】
『形成』 1978.2 「無題」 (10)