目次
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全短歌(歌集等)
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野分の章
汗あえて
ほころびを
光線の
聴衆の
ほどく人の
内よりの
なりふりなど
悪霊を
03238
ほころびを繕ふごとく在り経たる五年と思ふ忌の日を過ぎて
ホコロビヲ ツクロフゴトク アリヘタル ゴネントオモフ キノヒヲスギテ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.181
【初出】
『形成』 1978.3 「無題」 (1)
03239
光線のゆゑかも知れね位置替へて仰ぐ塑像のふと弛みたり
コウセンノ ユヱカモシレネ イチカヘテ アオグソゾウノ フトユルミタリ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.181
【初出】
『形成』 1978.3 「無題」 (2)
03240
聴衆の一人とあれば安けきに汗あえてバッハを弾くピアニスト
チョウシュウノ ヒトリトアレバ ヤスケキニ アセアエテバッハヲ ヒクピアニスト
『野分の章』(牧羊社 1978) p.182
【初出】
『形成』 1978.3 「無題」 (3)
03241
ほどく人のときめきを思ひ花びらのかたちに結ぶ赤きリボンを
ホドクヒトノ トキメキヲオモヒ ハナビラノ カタチニムスブ アカキリボンヲ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.182
【初出】
『形成』 1978.3 「無題」 (4)
03242
内よりの力に割れし卵かと籾殻を分けてゐる手が怯む
ウチヨリノ チカラニワレシ タマゴカト モミガラヲワケテ ヰルテガヒルム
『野分の章』(牧羊社 1978) p.182
【初出】
『形成』 1978.3 「無題」 (5)
03243
なりふりなどかまはずならむ年齢を怖れて思ふ髪を巻きつつ
ナリフリナド カマハズナラム ネンレイヲ オソレテオモフ カミヲマキツツ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.183
【初出】
『形成』 1978.3 「無題」 (6)
03244
悪霊を払ふが如く呼ぶごとく藁を焚く火の燃えあがりたる
アクリョウヲ ハラフガゴトク ヨブゴトク ワラヲタクヒノ モエアガリタル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.183
【初出】
『形成』 1978.3 「無題」 (7)