目次
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全短歌(歌集等)
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野分の章
諦め易く
あたたかき
かすかなる
天気予報を
夜の海に
吊られゐる
パパイアの
抜け道を
蜂蜜の
山の桜の
03252
あたたかき夜霧のかなた街の灯は粒子撒きたるさまにちらばる
アタタカキ ヨギリノカナタ マチノヒハ リュウシマキタル サマニチラバル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.187
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (2)
03253
かすかなる花粉の匂ひ地に湧くと夜のくらがりを行くとき思ふ
カスカナル カフンノニオヒ チニワクト ヨノクラガリヲ ユクトキオモフ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.187
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (1)
03254
天気予報を聞かむラジオは夜桜につどふこよひの人出を伝ふ
テンキヨホウヲ キカムラジオハ ヨザクラニ ツドフコヨヒノ ヒトデヲツタフ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.188
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (3)
03255
夜の海に降り込む雪を思ひゐていつしか眠る病みて十日目
ヨノウミニ フリコムユキヲ オモヒヰテ イツシカネムル ヤミテトオカメ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.188
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (4)
03256
吊られゐるもののさびしさ店先のレインコートの裾ひるがへる
ツラレヰル モノノサビシサ ミセサキノ レインコートノ スソヒルガヘル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.188
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (5)
03257
パパイアの持ち重りするたのしさもながく続かず混むバスにゐて
パパイアノ モチオモリスル タノシサモ ナガクツヅカズ コムバスニヰテ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.189
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (6)
03258
抜け道を探してゐしが夢のなかのわれは諦め易くくぐまる
ヌケミチヲ サガシテヰシガ ユメノナカノ ワレハアキラメ ヤスククグマル
『野分の章』(牧羊社 1978) p.189
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (7)
03259
蜂蜜の底のこごりもゆるみ来としたたらせをりケーキの上に
ハチミツノ ソコノコゴリモ ユルミクト シタタラセヲリ ケーキノウエニ
『野分の章』(牧羊社 1978) p.189
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (8)
03260
山の桜のみごろを知らせ来し手紙持ち歩みつつ四月も過ぎむ
ヤマノサクラノ ミゴロヲシラセ コシテガミ モチアユミツツ シガツモスギム
『野分の章』(牧羊社 1978) p.190
【初出】
『形成』 1978.6 「無題」 (9)