呼びさます


03281
四肢高き馬のほとりにゐし夢の馬の数のみ殖えてゆきたり
シシタカキ ウマノホトリニ ヰシユメノ ウマノカズノミ フエテユキタリ

『風水』(沖積舎 1986) p.7
【初出】 『別冊小説新潮』 1978.1 呼びさます (1)


03282
雨乞ひの太鼓の音の響きゐし故郷はあらずどの地図見ても
アマゴヒノ タイコノオトノ ヒビキヰシ コキョウハアラズ ドノチズミテモ

『風水』(沖積舎 1986) p.8
【初出】 『別冊小説新潮』 1978.1 呼びさます (2)


03283
遠くにてサイレン鳴れり忘れゐし欲望を呼び醒ますごとくに
トオクニテ サイレンナレリ ワスレヰシ ヨクボウヲヨビ サマスゴトクニ

『風水』(沖積舎 1986) p.8
【初出】 『別冊小説新潮』 1978.1 呼びさます (3)


03284
ガラス戸の桟に足首切られたるわが映像を見て立ち尽くす
ガラスドノ サンニアシクビ キラレタル ワガエイゾウヲ ミテタチツクス

『風水』(沖積舎 1986) p.8
【初出】 『別冊小説新潮』 1978.1 呼びさます (4)


03285
音もなくクレーンの鈎の垂りて来て路上の誰を奪はむとする
オトモナク クレーンノカギノ タリテキテ ロジョウノタレヲ ウバハムトスル

『風水』(沖積舎 1986) p.9
【初出】 『別冊小説新潮』 1978.1 呼びさます (5)