機銃音

ひとりなす切り捨ててバングラデイシュに電気ドリルがぎざぎざの

03407
ひとりなす夕餉もつねのことにして古りしヒーターの螺旋がともる
ヒトリナス　ユウゲモツネノ　コトニシテ　フリシヒーターノ　ラセンガトモル

『風水』(沖積舎　1986)　p.52
【初出】　『短歌』　1978.9　機銃音　(１)


03408
切り捨ててしまふ葉先もわが持たずまつすぐ青しかぶらの茎は
キリステテ　シマフハサキモ　ワガモタズ　マツスグアオシ　カブラノクキハ

『風水』(沖積舎　1986)　p.52
【初出】　『短歌』　1978.9　機銃音　(２)


03409
バングラデイシュに生れなばとうに餓死しゐむと読めりひとりのさだめなき日に
バングラデイシュニ　ウマレナバトウニ　ガシシヰムト　ヨメリヒトリノ　サダメナキヒニ

『風水』(沖積舎　1986)　p.53
【初出】　『短歌』　1978.9　機銃音　(３)


03410
電気ドリルがビルを穿ちてゐる音の俄かに近し背中が熱し
デンキドリルガ　ビルヲウガチテ　ヰルオトノ　ニワカニチカシ　セナカガアツシ

『風水』(沖積舎　1986)　p.53
【初出】　『短歌』　1978.9　機銃音　(４)


03411
ぎざぎざの岩のつづきを越え来しが遠のきて山の形ととのふ
ギザギザノ　イワノツヅキヲ　コエコシガ　トオノキテヤマノ　カタチトトノフ

『風水』(沖積舎　1986)　p.53
【初出】　『短歌』　1978.9　機銃音　(５)