綿の雪


03419
存在が即罪悪と畏れたる若き日ありき雪深かりき
ソンザイガ ソクザイアクト オソレタル ワカキヒアリキ ユキフカカリキ

『風水』(沖積舎 1986) p.57
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (2)


03420
堕ちてゆく思ひまざまざと身にあるを思ひのみにて終へしめむとす
オチテユク オモヒマザマザト ミニアルヲ オモヒノミニテ オヘシメムトス

『風水』(沖積舎 1986) p.57
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (1)


03421
亡き人に庇はれて今もあるならむあはれまれてもあらむと思ふ
ナキヒトニ カバハレテイマモ アルナラム アハレマレテモ アラムトオモフ

『風水』(沖積舎 1986) p.58
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (3)


03422
いそしみていそしみてなほ足らざるは時間の如し力のごとし
イソシミテ イソシミテナホ タラザルハ ジカンノゴトシ チカラノゴトシ

『風水』(沖積舎 1986) p.58
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (4)


03423
コップのなかの嵐と思ひ至るまで時間をかけて苦しむあはれ
コップノナカノ アラシトオモヒ イタルマデ ジカンヲカケテ クルシムアハレ

『風水』(沖積舎 1986) p.58
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (5)


03424
秋の日の澄み徹りゐる道をゆき神隠しにわが遇ふにもあらず
アキノヒノ スミトオリヰル ミチヲユキ カミガクシニワガ アフニモアラズ

『風水』(沖積舎 1986) p.59
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (6)


03425
綿の雪しろじろとまとふ空間を俳優ひとり立ち去りゆけり
ワタノユキ シロジロトマトフ クウカンヲ ハイユウヒトリ タチサリユケリ

『風水』(沖積舎 1986) p.59
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (7)


03426
ぬけ出でていづくへ行かむ月明にひとすぢ光る水路のあらば
ヌケイデテ イヅクヘユカム ゲツメイニ ヒトスヂヒカル スイロノアラバ

『風水』(沖積舎 1986) p.59
【初出】 『形成』 1978.11 「無題」 (8)