供華のブバリア


03481
シベリアの冬を思ふは囚はれて橇に乗りたる記憶のごとし
シベリアノ フユヲオモフハ トラハレテ ソリニノリタル キオクノゴトシ

『風水』(沖積舎 1986) p.82
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (1)


03482
人の持つさびしさは知らねゆきずりに暗かりし顔のしばし離れず
ヒトノモツ サビシサハシラネ ユキズリニ クラカリシカオノ シバシハナレズ

『風水』(沖積舎 1986) p.82
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (2)


03483
汚染に強き植物といふ坂の上の鈴懸もいつか色づきて来ぬ
オセンニツヨキ ショクブツトイフ サカノウエノ スズカケモイツカ イロヅキテキヌ

『風水』(沖積舎 1986) p.83
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (3)


03484
かぐはしきブバリアの束花嫁の持つ花と言ひて供華に賜ひぬ
カグハシキ ブバリアノタバ ハナヨメノ モツハナトイヒテ クゲニタマヒヌ

『風水』(沖積舎 1986) p.83
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (4)


03485
怖るるを知るはいつの日幼な子は蛇のかたちをゑがきて倦まず
オソルルヲ シルハイツノヒ オサナゴハ ヘビノカタチヲ ヱガキテウマズ

『風水』(沖積舎 1986) p.83
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (5)


03486
切りかへす言葉を包みゐる日々にまざまざと錆びてゆく刄見ゆ
キリカヘス コトバヲツツミ ヰルヒビニ マザマザトサビテ ユクヤイバミユ

『風水』(沖積舎 1986) p.84
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (6)


03487
実験室にガラスの光る秤見え何の重さかはかられむとす
ジッケンシツニ ガラスノヒカル ハカリミエ ナンノオモサカ ハカラレムトス

『風水』(沖積舎 1986) p.84
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (7)


03488
掘りあげむ球根一つあらぬこと思ひてありて百舌に鳴かれつ
ホリアゲム キュウコンヒトツ アラヌコト オモヒテアリテ モズニナカレツ

『風水』(沖積舎 1986) p.84
【初出】 『形成』 1979.1 「無題」 (8)