苦しみてなす


03496
かの星と必ず決めて仰ぎゐききらめきはなべて短く過ぎき
カノホシト カナラズキメテ アオギヰキ キラメキハナベテ ミジカクスギキ

『風水』(沖積舎 1986) p.88


03497
歎きつつ死せる人らを責むるまでさかのぼりゐし思ひに気づく
ナゲキツツ シセルヒトラヲ セムルマデ サカノボリヰシ オモヒニキヅク

『風水』(沖積舎 1986) p.88


03498
へびむろにとぢこめられし如き日に救ふ領巾さへわが持たざりき
ヘビムロニ トヂコメラレシ ゴトキヒニ スクフヒレサヘ ワガモタザリキ

『風水』(沖積舎 1986) p.89


03499
綿菅のみのりのときに来会ひたりしろじろと風の渡らひゆけり
ワタスゲノ ミノリノトキニ キアヒタリ シロジロトカゼノ ワタラヒユケリ

『風水』(沖積舎 1986) p.89


03500
何事も苦しみてなすわれならむ香に立つ菊の花を茹でつつ
ナニゴトモ クルシミテナス ワレナラム カニタツキクノ ハナヲユデツツ

『風水』(沖積舎 1986) p.89


03501
欠落の多きひとりゐ留守のまにかかれる電話など知らずに過ぎむ
ケツラクノ オオキヒトリヰ ルスノマニ カカレルデンワナド シラズニスギム

『風水』(沖積舎 1986) p.90