背すぢひとすぢ


03547
暑き夜に見し夢のなか光る目をのぞかせてわれはアラブの女
アツキヨニ ミシユメノナカ ヒカルメヲ ノゾカセテワレハ アラブノオンナ

『風水』(沖積舎 1986) p.108
【初出】 『形成』 1979.9 「無題」 (1)


03548
よぢのぼり塀をこえたる瞬間にまぶしきライト浴びて目ざめつ
ヨヂノボリ ヘイヲコエタル シュンカンニ マブシキライト アビテメザメツ

『風水』(沖積舎 1986) p.108
【初出】 『形成』 1979.9 「無題」 (2)


03549
意識してへだてがましくなすことも今のひとりを守らむがため
イシキシテ ヘダテガマシク ナスコトモ イマノヒトリヲ マモラムガタメ

『風水』(沖積舎 1986) p.109
【初出】 『形成』 1979.9 「無題」 (3)


03550
独断にすぎざらむハイビスカスはみだらな咲き方をなすと思ひつ
ドクダンニ スギザラムハイ ビスカスハ ミダラナサキカタヲ ナストオモヒツ

『風水』(沖積舎 1986) p.109


03551
入れ替ふる心など持たず坐りゐて背すぢひとすぢ鎮まりかへる
イレカフル ココロナドモタズ スワリヰテ セスヂヒトスヂ シズマリカヘル

『風水』(沖積舎 1986) p.109


03552
スパンコールちりばめてゆく指先のわが手ともなくこまかに動く
スパンコール チリバメテユク ユビサキノ ワガテトモナク コマカニウゴク

『風水』(沖積舎 1986) p.110
【初出】 『形成』 1979.9 「無題」 (6)


03553
山里は人かげあらず石仏をただの石のごとく道ばたに置く
ヤマザトハ ヒトカゲアラズ セキブツヲ タダノイシノゴトク ミチバタニオク

『風水』(沖積舎 1986) p.110
【初出】 『形成』 1979.9 「無題」 (4)


03554
五線譜をたどりつつ歌ふ少女ゐてロシア民謡らしくなりゆく
ゴセンフヲ タドリツツウタフ シヨウジョヰテ ロシアミンヨウ ラシクナリユク

『風水』(沖積舎 1986) p.110
【初出】 『形成』 1979.9 「無題」 (5)