目次
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全短歌(歌集等)
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風水
雪娘
汗あえて
人数の
こはされて
雲の秀の
鉄橋を
おが屑を
防虫加工
収拾の
歌舞伎座の
亡き父の
神経の
素通りの
詫びられて
いつとなく
太々と
辻褄を
夜の更けに
ふるさとは
雪の日は
亡き人の
夏の服を
03586
汗あえて通ふといへどこの夏を繃帯一つわが巻きをらず
アセアエテ カヨフトイヘド コノナツヲ ホウタイヒトツ ワガマキヲラズ
『風水』(沖積舎 1986) p.122
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (1)
03587
人数のほどよく乗れる昼のバス目の化粧濃き少女のゐたり
ニンズウノ ホドヨクノレル ヒルノバス メノケショウコキ オトメノヰタリ
『風水』(沖積舎 1986) p.122
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (2)
03588
こはされてゆく店のありふるびたる招き猫などいかになりけむ
コハサレテ ユクミセノアリ フルビタル マネキネコナド イカニナリケム
『風水』(沖積舎 1986) p.123
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (3)
03589
雲の秀のいつしか崩ればらばらの珊瑚のかたちに浮きて茜す
クモノホノ イツシカクズレ バラバラノ サンゴノカタチニ ウキテアカネス
『風水』(沖積舎 1986) p.123
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (4)
03590
鉄橋を渡り切りたる列車見ゆかすかに上り勾配なして
テッキョウヲ ワタリキリタル レッシャミユ カスカニノボリ コウバイナシテ
『風水』(沖積舎 1986) p.123
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (5)
03591
おが屑をかき分けて何も出でてこぬ夢ながながと見て手をひらく
オガクズヲ カキワケテナニモ イデテコヌ ユメナガナガト ミテテヲヒラク
『風水』(沖積舎 1986) p.124
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (6)
03592
防虫加工してあるといふ布を裁つ新しきものにもなじみてゆかむ
ボウチュウカコウ シテアルトイフ ヌノヲタツ アタラシキモノニモ ナジミテユカム
『風水』(沖積舎 1986) p.124
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (10)
03593
収拾のつかぬ思ひにあり経しが今朝は木槿の白一つ咲く
シュウシュウノ ツカヌオモヒニ アリヘシガ ケサハムクゲノ シロヒトツサク
『風水』(沖積舎 1986) p.124
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (7)
03594
歌舞伎座の舞台ならねば坂の上ただ音もなく雪降りゐたれ
カブキザノ ブタイナラネバ サカノウエ タダオトモナク ユキフリヰタレ
『風水』(沖積舎 1986) p.125
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (8)
03595
亡き父の懐中時計出でて来ぬ銀の鎖はいつしかあらず
ナキチチノ カイチュウドケイ イデテキヌ ギンノクサリハ イツシカアラズ
『風水』(沖積舎 1986) p.125
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (9)
03596
神経の接ぎ目接ぎ目の痛む日かパンタグラフは火を噴きて過ぐ
シンケイノ ツギメツギメノ イタムヒカ パンタグラフハ ヒヲフキテスグ
『風水』(沖積舎 1986) p.125
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (11)
03597
素通りのためらひもなく灯ともしていきいきとゆく回送のバス
スドオリノ タメラヒモナク ヒトモシテ イキイキトユク カイソウノバス
『風水』(沖積舎 1986) p.126
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (13)
03598
詫びられて済むことならずクーラーに冷やされてゆく魂までも
ワビラレテ スムコトナラズ クーラーニ ヒヤサレテユク タマシイマデモ
『風水』(沖積舎 1986) p.126
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (12)
03599
いつとなく雨はあがれり前山の霧抜きて立つ三角帽子
イツトナク アメハアガレリ マエヤマノ キリヌキテタツ サンカクボウシ
『風水』(沖積舎 1986) p.126
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (14)
03600
太々と何のグラフか上昇しやまぬ朱線を見て夢のなか
フトブトト ナンノグラフカ ジョウショウシ ヤマヌシュセンヲ ミテユメノナカ
『風水』(沖積舎 1986) p.127
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (15)
03601
辻褄をあはせてすむとも思はねどくらがりに降る音のみの雨
ツジツマヲ アハセテスムトモ オモハネド クラガリニフル オトノミノアメ
『風水』(沖積舎 1986) p.127
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (16)
03602
夜の更けにものを食みゐて兵糧の尽きなば果てむ戦の如し
ヨノフケニ モノヲハミヰテ ヒョウロウノ ツキナバハテム イクサノゴトシ
『風水』(沖積舎 1986) p.127
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (17)
03603
ふるさとは城のある町ゆくりなくジョギングコースとして映されぬ
フルサトハ シロノアルマチ ユクリナク ジョギングコース トシテウツサレヌ
『風水』(沖積舎 1986) p.128
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (18)
03604
雪の日はまろびて遊び頰赤き雪娘なりし遠き昔よ
ユキノヒハ マロビテアソビ ホオアカキ ユキムスメナリシ トオキムカシヨ
『風水』(沖積舎 1986) p.128
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (19)
03605
亡き人の真珠の耳輪手にのせてかなしみはふとわれを清くす
ナキヒトノ シンジュノミミワ テニノセテ カナシミハフト ワレヲキヨクス
『風水』(沖積舎 1986) p.128
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (20)
03606
夏の服を仕舞はむとしてうすものを透かしくるごときかなしみに会ふ
ナツノフクヲ シマハムトシテ ウスモノヲ スカシクルゴトキ カナシミニアフ
『風水』(沖積舎 1986) p.129
【初出】
『短歌』 1979.11 雪娘 (21)